第十一話 ページ11
「とりあえずその自作アニメはツッコミが追いつかねぇからやめろ。」
「私、Aちゃんから聞きたいわぁ、無一郎くんとのお話。」
「私も頭が痛くなるのでやめてほしいですね。」
何だよ皆して。
私の扱いひどくない特にしのぶさん。
前世で私が何したってんだよ。
「あーあ、せっかく二年もかけて作り上げた大作なのに。」
「その時まだこっちで時透と会ってなかっただろお前。」
そうだっけ。
まぁいいよ細かいことは。
「仕方ないから話してあげますよ宇髄先生。」
「お前俺に対してはつくづく上から目線だな。」
やっぱり話すなら最初は入学式の日からだよね。
無一郎くんと出会った日。
「去年の四月、入学式の日に初めて会ったんです。」
「………初めて、ですか。」
「はい。そうです、けど?」
え、何? そんな落ち込むこと?
中学で初めて会ったらダメなの。愛が足りないってか。
「いえ、何でも。続けてください。」
「………? しのぶさん?」
………どうしたんだろう。
煮え切らない返事をするしのぶさんに首を傾げつつも、私は話し出した。
「無一郎くんと会った瞬間ね、」
あの日のことを思い出すと、自然と頬がゆるむ。
少しの恥ずかしさも相まって、熱くなった顔を手で覆った。
「この人が運命の人なんだなって確信したっていうか。初めて会った気がしないなっていうか。」
「素敵ね!」
私よりも頬を赤くした蜜璃さんが、にこにこ相づちを打ってくれた。
恋の話になると蜜璃さんがいつも以上に生き生きしている。
でも運命の人とか、何言ってるんだってしのぶさんには思われてそうだけど。
そう続けようとしたら、しのぶさんと宇髄先生が驚いたような、強ばった顔をしているのに気付いた。
てっきりふざけてるだろって言われると思ってたのに、その目は真剣そのもので。
「………ちょっと長くなりますけど、いいですか?」
懐かしい気分に浸りながら、私はそう言った。
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作者名:夢見草 | 作成日時:2021年3月1日 20時