君に、愛の花束を (ページ1)

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第一話ページ1

(今日、こそ。今日こそ言おう。)

放課後。

夕日に照らされた帰り道。

一人の少女が、拳を固く握りしめていた。

視線はずっと、隣を歩く少年に注がれている。

"好き"

言葉にするとたった二文字

いつも直前で言い淀んでしまうその言葉を、今日こそは伝えたい。

「あのっ！」
「あのさ、」

同時に声を発した二人は、息を呑んで口をつぐんだ。

「Aから言って。」

「………あ、えっとね、」

Aと呼ばれた少女は、身体を強ばらせて口ごもる。

そして、そんなAを固唾を呑んで見守っている、二人の影。

紫に染まった髪を飾る蝶々と、桜餅のように鮮やかな髪が揺れている。

(頑張ってください、Aさん。)

(頑張ってAちゃんっ！)

「…………花火大会、行かない？」

がくっ

木陰にいた二人の少女たちの肩が、脱力したように下がる。

「うん。行こう。」

「ほんとっ！？」

それでも嬉しそうに微笑むAを見て、それはそれでいいかと苦笑する二人。

「それで、無一郎くんは？」

「ああ、えっと、」

今度は少年の方が、落ち着かないように視線をさ迷わせた。

そしてこちらも、陰ながら見守る二人の男がいる。

(派手にいけ、言っちまえ！)

(……………。)

「…………Aに渡したいものあって。」

はぁ

物陰にひそむ二つの影が、残念そうにため息をついた。

あからさまに頭を抱える派手教師と、もはや弟を見るような目で無一郎を見ている長男気質のスマブラ教師。

(怖じけづくなよ時透！)

(……………。)

無一郎が差し出した袋を、Aは大切そうにそっと手にとった。

「あけていい？」

「いいよ。」

包みをゆっくりと開いたAは、太陽の光を受けて煌めく髪飾りをそこから取り出す。

深い海の底を映したような藍色の蝶々は、Aの瞳の色とよく似ていた。

「きれい………。嬉しい、ありがとう。」

頬を染めて笑うAを、無一郎も優しい笑みで見つめている。

告白の言葉は胸の内に消えたまま、それでも幸せそうに、二人は微笑み合っていた。