バロメーター50 ページ1
まさかこいつの顔を見て安心する時が来るとは思わなかった。
死柄木は明らかにブチ切れているのに、荼毘はさらに挑発する様に私の肩に手を回してもたれかかってきた。
「仲良く話してただけだよなぁ？Aちゃん？」
「そうかお前死にたいんだな？そうだろ？なあ？」
死柄木が手を伸ばしながら勢いよく迫ってきて、荼毘の炎が真横で燃え上がる。
やばい死ぬ。
二人がぶつかりそうになった瞬間、黒いモヤが部屋に広がり、彼らをワープですれ違わせた。
「客人の前で暴れてはいけません」
ナイスすぎる。
私この人好きだ。
優しいし、バロメーターないし。
死柄木は首をボリボリ掻きながらモヤの方を睨んで舌打ちをした。
「チッ、黒霧、こいつどっかに飛ばせ」
「おいおい、追い出すってのかよ」
黒霧さんね、覚えた。
……いやでもさっきのは怖すぎた。
二人とも絶対本気だったよね？
間近で感じた二人の殺意に、震えが止まらず心臓がドクドクと脈を打つ。
「Aちゃん、こっちおいで」
すっかり怯えきって何も話せなくなってしまった私の手を引いて、死柄木がソファーに座った。
「見てこれ、あの時の写真」
そう言って彼がボロボロになった写真を差し出してきた。
それにはコーギーと並んで写る、幼い頃の死柄木だと思われる人物と、端の方で砂遊びをしている私とママが写っていた。
いや、一緒に遊んですらないじゃないか。
『……ほんとにほんとなんだ』
「だからそうだって言ってるじゃん」
写真の中の彼は、照れくさそうにぎこちなく笑っている。
こう見ると普通の男の子にしか見えない。
なんで今は狂気じみた笑顔しかできなくなってしまったんだ。
「……ずっと会いたかった」
彼が写真を持つ私の手に自分の手を重ねた。
一本一本指を絡ませる彼に、呼吸が早くなる。
親指、人差し指、中指、薬指、とゆっくり私に触れていく度に、彼のバロメーターが上がる。
「……怖いの？」
私の鼓動は、今、どんな男の子に触れられた時よりも早くなっている。
あと一本、少しでも動けば触れてしまいそうなその指を、涙の浮かぶ目で見つめていると、彼が耳元で囁いた。
「大丈夫だよ、Aちゃんだけは壊さないから」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 897人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Selena(プロフ) - おいやみーさん» ご指摘ありがとうございます🙇♀️ 確かに言われてみればそうだ笑 原作を全て忠実に再現しきれているわけではないので、他にも矛盾点があるかもしれないですが、そこはご愛嬌という事でお願いします🥲 (1月6日 16時) (
レス) id: b337fdb84f (このIDを非表示/違反報告)
おいやみー - 志村転弧だと死柄木が思い出すのは髪が白くなった泥花事件以降では？ (1月1日 10時) (レス) @page34 id: df2aa3c6fc (このIDを非表示/違反報告)
う - 宇宙の塵ルートだけはwwwwwwおもしろすんぎぃっ (9月30日 18時) (レス) @page38 id: 7215328c99 (このIDを非表示/違反報告)
Selena(プロフ) - 秋田の肋骨さん» ご指摘ありがとうございます🙇♀️🙇♀️ (8月12日 23時) (レス) id: 17f1437868 (このIDを非表示/違反報告)
秋田の肋骨 - すき。めっちゃ好みです！ 修学旅行ではなく，林間合宿では、、、？ (8月12日 1時) (レス) @page50 id: 93fef38cdf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Selena | 作成日時：2023年3月24日 10時
