ろくじゅーきゅー ページ36
……突然だった。
ヒーローである両親の個性が、忽然と姿を消したのは。
「な、なんだ……？ なぜ風が生まれない？、」
「私も、急に花が作れなくて、」
私が好きそうだからと、一葉さん使ってまで縫いぐるみをクレーンゲームで取ったパパ。
風を斬撃にして飛ばすと言う、あまりに殺人に特化した個性を持ちながら、邪心を一切持たず、周りの者から尊敬されていた記憶がある。
毎晩、必ず仕事を２０時までには終わらせて帰宅し、私が寝るときに絵本を読んでくれていたママ。
花の持つ魅惑の力を操る個性で、ヴィランを捕まえるのに貢献してきたらしい。
その闘い方のうつくしさも相まって、アングラ系でありながら、ファンからの人気はすごかった。
両親と過ごしていた時期は、まだ私は幼かったけれど、それでも、所謂幸せな記憶はまだある。
ヒーローが大好き、私もああなりたい、そう思っていた時期も、ある。
善人と善人のもとに生まれ、善人と善人により育てられたから、社会貢献を夢見て、個性発現を夢見た。
全て、ぶち壊したのは私。
パパもママも、悪くない。
でも、今でも思うところはある。
「パパ！ ママ！ 大丈夫？」
２人のコスチュームに滲む、真っ赤な華。
「ああ、心配いらない」
「でもっ、」
私にできること、何か、何か…！
「いっ、痛いの痛いの飛んでけぇ！！」
２人の傷口に手を当てて、お祈りしたら、まあびっくり！
……術式が発動しちゃったぁ。
ヒーローは嫌いだよ、その次の日に閉め出しあがって、！！！！
……でも、私に非がないわけじゃない。
いい加減、嫌でも理解してるつもり。
術式が発動するまでの優しさは、うん。
だから、いつまでも、雪菜ちゃんや悟、恵に甘えてばかりじゃいられない。
知らなきゃいけない。パンピーとは何たる者か。
私が、呪術師であるために、
恵の隣を、走っていくために！！
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作者名：Sela | 作成日時：2022年5月27日 22時
