01.《夢》物語 ページ1
───桜。
あの日、何処かの豪邸の庭にあった、大きな桜の樹木の下で、お気に入りの猫のぬいぐるみを手に、ただ独りで佇んでいた。
そこで何をしていたのか、もしくは誰かを待っていたのか、もう覚えてはいない。
「何をしているの？」
その時、背後から声が聞こえた。その方へ振り返ると、そこには同年代ぐらいの穏やかそうな男の子がいて。それでも《私》は怖くって。ギュッと更にぬいぐるみを強く抱き抱えていた。
「…僕はキミに危害を加えるつもりは無いよ。そんなに怖がらないで」
その声はとても温かくて、優しくて。私の心をを酷く落ち着かせた。
『…し、知らない人に話し掛けられたら、無視しろって…お父様が……』
「…──、僕の名前は──だよ。ほら、これでもう知らない人じゃないでしょ？」
いつの日か読んだ小説で見た、お話のような言葉。彼は舞う桜の中で、ゆっくりと私の方へ歩み寄ってくる。
「…キミ、君の名前は？」
『………A』
「歳はいくつ？」
『…7つ』
「7歳か、僕の方が二つ年上だね」
お兄ちゃんって呼んでもいいよ、とニコリと綺麗な笑みを浮かべて言う彼。でも、私は言葉を返すことなく、彼の方を向いていた身体をくるりと桜の樹木の方へ動かした。
横から、無視は酷いよ、とか、お兄ちゃんって呼んで欲しかった、だとか、可笑しな愚痴のようなものが聞こえるけど、私は真っ直ぐ舞って行く桜の花びらを眺めていた。
「この桜…綺麗だよね」
うん、綺麗。声に出来なかったその言葉。
「珍しい、真っ白な桜。でも少しだけ桃色がかっている。美しくって、でも何処か寂しげで…まるで今のキミみたいだね」
『…私？』
「何を悩んでいるのか、何を考えているのかは、僕には分からないけど、こうして出会ったんだ。だから今は無理かもしれないけど、キミのこと、いつか心を開いた時、聞かせて欲しいな」
温かなその言葉に。優しげに笑うその微笑みに。初対面のはずの彼が、どこか懐かしく思えてくる。
「約束、してくれる？」
あの後、私は何と言葉を返したのだろうか。
───あの桜は、その言葉を覚えているのだろうか。
あの日、彼と見た桜は、もう、儚い記憶の一部でしかない。例え、同じ桜を瞳に映したとしても、きっとあの日の光景とはまるで別物だろう。
姿も声も思い出も、全てが消え去ってしまう前に、もう一度君に、押し込めた思いを伝えたい。「ありがとう」って。
例え、君が私の事を、あの日の約束を忘れていたとしても、私は彼の瞳を否定したく無いんだ。
少女だった、あの日の思い出。温かさをくれたあの人との思い出。
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う - やばい好き(←応援してます！更新出来れば頑張ってください！気になる(￣ ￣) (12月11日 21時) (
レス) @page5 id: 7215328c99 (このIDを非表示/違反報告)
ここ(プロフ) - 最＆高です👍️ (2021年12月10日 16時) (レス) @page5 id: ff535d7292 (このIDを非表示/違反報告)
白猫さん(プロフ) - 作者さんのペースで更新頑張ってください！！ 続きが気になる…………。 (2021年11月5日 0時) (レス) id: d1d66ac9b7 (このIDを非表示/違反報告)
ｱｻﾋｲｲｲｲｲｲｽｳｳﾊﾟｱｱｱﾄﾞｳｳﾗｱｱｱｱｲ - 最高 (2020年12月14日 23時) (レス) id: 9ee51932ee (このIDを非表示/違反報告)
肉 - 初めから読んで追いつきました体調に気おつけてください更新頑張ってください|ωΦ*)ｺｿｰﾘ･･･ (2020年9月4日 21時) (レス) id: 33a07a44b4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：オー笛 | 作成日時：2019年4月30日 9時
