第4話「魔導書？持ってないけど」 ページ6
ユリウスとAは、魔導書塔に向かっていた。
Aが15になっているのに魔導書を持っていなかったからだ。
「えっ、嘘、持ってないの？！？！」
「魔導書はギリ知ってる。でもどこで貰うのか知らん」
ということで、二人で街を歩いていた。
「…で、A」
「？」
「そのマントは？」
そのマント、というのはフード付きの丈が長いマント。Aが街に行くときは必ず身に付けているものだった。
「黒のほうがよかったか？」
「白でいいよ！！(；ﾟДﾟ)ってそうじゃなくて！」
Aは黒と白、色違いのそれを持っていた。
夜は逃げやすいから黒。昼間は目立たないように白。そう使い分けていた。
今は昼。目立つのもまぁめんどいし、と白を着てきた。
だからAは、ユリウスが「そうじゃない」と怒る理由がよくわからなかった。
「だからー、そんな深くかぶらなくてもいいんじゃないって！」
「…何か悪いか？」
Aは不服そうにそう答えた。どこかさっきまでよりも、声のトーンが低い気がした。
ユリウスは「ん〜…まぁいっか」と言い、諦めたようだった。
ユリウスが足を止めたので、Aも足を止めてフードを少しめくり、目の前にそびえたつ大きな塔をみあげる。
そこには膨大で多種多様、そしてまだ未熟な魔が眠っていた。
「さぁ、こっちだよ」
ユリウスはエスコートするつもりなのか手を差し出してくる。
だがAとて、そこまで鈍感じゃない。さっきから道の端や家屋の中から聞こえていた声は、間違いなく自分を否定しているものだった。
気にするのさえ面倒だからあえてコイツに言うこともしなかったが、どうせ知ってるんだろうと思う。
同情なんかで俺を助けた気なんだろうが、後悔してんだろ、どうせ。
「ふふっ」
ユリウスは笑った。Aが考えていることなど、筒抜けだったからだ。
同情なんかじゃないのになぁ。
「ほら行くよ！A！」
ユリウスは微動だにしないAの手をとり、二人は駆け足で魔導書塔の中へ入っていった。
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作者名：ミヤビ | 作成日時：2018年8月28日 20時
