22死の臭い ページ22
まだ初夏。
ただし、昼の奥多摩はかなり暑い。
六月なのに、過去最高気温の二十五度を超えて二十八度だそうだ。
これから、実際現場へ向かうが、山を登らねばならない。
さっきまではまだ日が昇りきっていなかったからましだったが、これからキツくなりそうだった。
まず絶対山道を歩いていい気温ではない。
「これって、」
日記を読みながら山道への橋を登っていると、捜査線上には一切記録が残っていない人物の名前があった。
伊吹さんという、性別不明の人物。
知り合った経緯は分からないが、駅をまたいで遊びに行ったりしている。おそらく友人だろう。
そして、事件当日も彼女と会う約束をしていたらしい。
……これは、間違いなく犯人だ。
「おい、鬼怒川！」
「あ？」
後ろで項垂れながら、のそのそと付いてきている中堂系に、いきなりチョークスリーパーを決められた。
次の瞬間、私の横をものすごい勢いの車が通りすぎる。
「……ビックリしたぁ」
「お前はリードがないと駄目なのか？」
「せ、せめてハーネスにしろよ。子供が付けるようなやつ」
「……お前なぁ」
犬のように好奇心旺盛で、運動神経がいい彼女は、一人で突っ走ることが多い。
なにかに夢中になると、他の事に気を配るのも苦手だった。だから、中堂が嫌味で言ったリードに関して、鬼怒川的にはわりと賛成だった。
しかし、彼が言いたいのはそういうことではない。もっと気を付けろと言いたかったのだ。
意外な返答に目を見張ったが、伝えたいことは伝わりそうもないので諦めた。
「まぁいい、これからどうやって伊吹を探す」
「今、奥多摩署に連絡をいれてる」
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作者名：SegwMYq58QnbmKq | 作成日時：2024年4月5日 2時
