pair days -episode 4-【番外編】 (ページ32)

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少し照れたように笑っている、藤宮優としてメディアに出るようになってからは特に外で隙を見せたりしない、しっかりしている彼女が俺と一緒にいると安心して気を緩めてくれる。

そんなふうに言われて嬉しい気持ちであふれてくる、自然とさっきまでの面白くなかった気持ちが心の中で薄れていく。

Aは本当に、俺の嫌な気持ちを治めてくれる。たまらなく愛おしくて離したくない。彼女を引き寄せて、ふわっと抱き締め、俺の腕の中に彼女を閉じ込めた。

『け、拳くん』

でもやっぱり駄目、かも知れない。さっきは俺のそばならいいやって本気で思ってたんだけどな。勝手な嫉妬だよね、ぼんやりと考え込んでいると、腕の中で彼女が身動いで、ダメと俺の胸を押し返そうとするのを阻止するかのように軽く力を込めた。

「ねぇA」

『んっ、なに』

「Aが電車で寝そうになるのを見てて、俺のそばだったら寝てもらっても良いって思ってたんだよね……でも、」

人間疲れたら寝ちゃうものだ、冬の電車内の温かさや揺れは気持ちがいいし絶対に眠くなる。それを寝て欲しくないなんて、こんな勝手な想い伝えるのはどうなのかと考えてしまって言葉が途切れる、するとAが黙ったまま俺の背中に腕を回して抱き着いてきた、Aの腕に力が入ったのが分かった。

『もう人前で寝たりしない、約束する』

「えっどうして」

『うん、何となく。拳くんが嫌な気持ちになるのは私も嫌だから』

「はぁぁ、本当俺の彼女って可愛いんだけど、どういうこと？」

『どういうことって、特に可愛いこと言ったつもりないんだけど』

「いーや言ったね、Aが可愛くないとか認めないから」

そんなこと言われても…なんて可愛く照れている。こうやって俺の気持ちを汲んで伝えてくれて、彼女が寄り添ってくれる、Aの愛を感じて、それだけで満たされる。あぁ、どうでも良くなってきたかも。

「とにかくAは可愛いの、でも何かもういいや」

『えっ、もういいやって何が？』

「俺が一緒で気が緩んでくれるのめちゃくちゃ嬉しいし、やっぱり俺が一緒だったら外でも寝て良いってことにする」

『えっと、急にどうして』

「Aが可愛いから、可愛いは正義なんだよ」

『それ全く解らないんだけど』

腕を緩めて彼女を解放して顔を覗き込めば、理解できないって顔してる、そういう顔も可愛い。
　
　
　