pair days -episode 4-【番外編】 (ページ31)

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そんな馬鹿なことを考えていると電車がガタンと揺れた。あっ、と思ったときには揺ら揺らしていたAの頭が隣に座っていた男性の肩にトスンと乗った。反射的に手を出そうとしたら、Aがハッと気づいて慌てて姿勢を正す、男性に対して恥ずかしそうに謝っている姿を見て、出そうとした手を引っ込めた。

可愛い女の子に寄りかかられ、謝られて嬉しそうな男性。

この人絶対にAのこと可愛いって目で見てるし、気安くAに話しかけている。

挙句の果てには、俺の肩で良かったらとか言い出して、こんなところで女の子に声を掛けるなよ。

Aも困った顔をしているじゃないか。

本当にこの人、何言ってんの？

めちゃくちゃイラッとする、Aがどうしようってチラリと俺を見た、その瞳を見て、少しだけイライラが治まったけど、この状況面白くないものは面白くない。そんなとき丁度電車が止まり、プシューと音を立ててドアが開いたのを合図に、気づいたら身体が勝手に動いていた。

「あっ降りるのここだよ、急ごう」

『えっ、降りる？』

俺たちの降りる駅はもう２つ先であるのにも関わらず彼女の手を引いた、すみません降りますと人の間を縫うようにして電車から連れ出した。降りたところは階段のそばではない所為か人もほぼいなく閑散としていた。電車の扉が閉まり、走り出す電車を見送る。

『えっと、拳くん、大丈夫？』

彼女の戸惑った声が聞こえてきてハッとする。ヤバいやってしまった。慌てて彼女に向き直って謝った。

「ごめんっ、ここ降りる駅じゃないのに、A寝落ちしそうになるくらい疲れてるのに、これじゃ帰るの余計に遅くなっちゃうよね」

『ん、大丈夫だよ。それより拳くんありがとう』

「えっ、なんでお礼なんか」

『さっきの人に私が困ってたから連れ出してくれたんでしょ』

「それはそうだけど、もっと別の方法だってあったのに、俺が間に入って上手く話したりすれば」

『ううん、ちょっとあの人の勢いに困ってたし、あのまま隣に座ってるのも不安だったから拳くんが助けてくれて安心した。それとごめんなさい』

「そんな、Aが謝ることなんて１つもないでしょ」

『他の男性(ひと)の肩に頭乗せちゃったから、あれは私が悪かった。普段１人で電車乗るときに眠ったりはしないんだけど、拳くんと一緒にいるからかな、安心して気が緩んじゃったみたい』
　
　
　