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『ん、やっぱり上手く出来ない』
「大丈夫、練習すれば出来るようになるよ」
うーん難しいな、別にウインク出来なくても問題ないし練習しなくても良いんじゃないかと思えるけど、彼が期待の眼差しを向けてくる。そういう目で見られると、応えたくなっちゃうのは彼が好きだから、彼に喜んでもらいたいってのもある。
練習を続けると両目閉じたタイミングで唇に柔らかい感触を感じる。急にキスされてビックリして目を開ければ彼がにんまり笑っていた。
『なにやってるのっ』
「ふふっ一生懸命練習してる奥さん可愛いなって、でも目を閉じられるとキスしたくなるよね。もうAが可愛いすぎるんだよ」
『練習しよう、って言ったの拳くんでしょう』
「へへっ、ごめんごめん。それなら練習の続き〜」
『もう仕方ないな』
もう１回と練習してみれば、少し出来た感じがする。拳くんが嬉しそうに、今の良い感じだよと笑ってくれる。彼は褒めてくれるけどたぶん不格好なウインクだった気がする。
「あと少しで出来そうじゃない？」
『そうかなぁ、まだ難しいよ』
「そんなこと言わずに、ほらほらやってみて、Aの可愛いウインク見たいなぁ」
『ん、分かった』
今度こそとウインクしてみると、両目を閉じてしまった。あぁ失敗だと思っていると再びキスされる。
『拳くんっ』
「ごめん、だってAが可愛くて」
『これじゃ練習にならないじゃない』
「ウインク出来るようになったら、キスされないかもよ。キスが嫌なら早くウインク出来るようにしなきゃね」
『そ、そう言われても……拳くんのキスは嫌じゃないもん』
もちろん状況によってはキスされて困ることもあるけど、彼とのキスが嫌になるはずがない。別にそういうつもりじゃないけど、こんな風に言うとキスの催促と思われないだろうか、ちょっと恥ずかしくなって彼から視線をそらした。
「くっ俺の奥さん可愛すぎる…もう好き」
引き寄せられて、１回強くギュッと抱き締めると身体を少し離して、彼の手が伸びてきて顎をクイッとされキスを落とされた。徐々に熱が入り深くなっていくキスに、もっと彼とのキスを続けたくなって彼にしがみついた。すると彼の唇が離れていくのが名残惜しくて彼を不満気にジッと見つめてしまった。
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作者名：佐伯 | 作者ホームページ：
作成日時：2023年11月5日 10時
