3 ページ30
ゴチ最終戦は生放送でクビが決まる。俺は祈りながらテレビを視聴していたけど、今まさにAがクビに決まってしまったようだ。他にもノブさんや高杉さんまでもがクビになってゴチ史上最多の3人がクビとなってしまった。Aは涙を浮かべながらも1年間共に戦ったゴチメンバーへの言葉を贈っている。
Aの表情から気持ちが伝わってくる。1年でクビになってしまって悔しさが感じられる、初めてのバラエティレギュラーで体を張って一生懸命頑張っていた彼女。帰ってきたあとは頑張ったねと声をかけてあげたい。
《これから帰ります》とAからメッセージが来たのは日付も変わって深夜1時過ぎであった。《お疲れさま、待ってるよ》とメッセージを返した。既読にはなったけど特に何も返ってこない。色々気持ちも落ち着かなくて放心してるんだろう。早く抱き締めてあげたくてたまらなくなる。
そろそろ帰ってくるかなと時計に目を向けたら、丁度ガチャリと鍵を回す音が聴こえてきた。急いで玄関に向かうと、鍵を閉めてから振り向くAと目があった。泣き腫らした目をしていた。力無く笑って、ただいまと言う彼女の腕を取り引き寄せ抱き締めると、彼女の手からバッグがポスンと床へ落ちる。気にせずそのまま抱きしめていた、彼女の後頭部を撫でながらお疲れさまと声をかけた。
「A、頑張ったね」
『ん、拳くん……クビに、なっちゃったぁ』
「うん、残念だったね。でもAの頑張りは全部俺は知ってるから」
Aが俺の腕の中で静かに泣いている。ずっと落ち着くまで抱き締めて頭を撫でていた。少し経ったあと、彼女がありがとう、とそっと離れる。
『ごめん、拳くんの服濡らしちゃった。涙も鼻水も付いちゃった…もうやだぁ』
彼女は慌ててバッグを拾って中からハンドタオルを取り出すと俺の胸を拭いてくれる。その手を掴んで、気にしないのと笑って言う。
「俺の胸を濡らすのは、Aの特権でしょ。それともAは他の人の胸で泣くの?」
『そ、そんなことないっ、他の人はいやだよ』
「それなら問題ないよ、さあこんな時間だしAは軽くシャワー浴びてきな。明日の朝ゆっくり一緒にバスタブ浸かろう」
『え、一緒になの?』
「Aは明日午後から執筆するんでしょ?大丈夫だよ、一緒に入っても襲わないから、ただ俺が抱き締めてお風呂に入りたいだけ〜」
『襲わないから、って……もう』
クスクスと笑う彼女は可愛い、もちろん泣き顔だってめちゃくちゃ可愛くて好きだけど、俺はAの笑顔が大好きだ。
70人がお気に入り
「オリジナル」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:佐伯 | 作者ホームページ:
作成日時:2022年11月9日 1時