pair days -episode-【番外編】 (ページ29)

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確かに廊下で立ち往生していたら邪魔になるよね、彼女もそう思ったのかお礼を言っている。川上が立ち去ってから髪が引っ張られないようにくっついたままキッチンへ移動した。

気を取り直して髪を外そうとするけど妙に絡まっていてこれは時間かかるかも？そう伝えれば彼女はハサミで切ってもいいなんてことを言う。最近髪を伸ばしている彼女にそんなことさせたくない。

「なに言ってるのAいま髪伸ばしてるでしょ？少しずつ伸びて来てるし、何よりこんなに綺麗な髪なんだからそれはダメ」

『あ、ありがとう』

有り得ない提案を即却下にしたが…また彼女の誘惑に駆られている。かなりまずい状況だけどここがオフィスだからギリ耐えている気がする。オフィスじゃなかったら今頃唇を奪って抱き締めている可能性もあったかも知れない。必死にボタンから外そうとしてたら近距離からの彼女の視線。可愛く俺を見つめている、そんな風に俺が好きって顔で見られたらますますキスしたくなるでしょ。

　急募 “煩悩消す方法” 求む

脳内で検索してもそんな方法出て来るわけないっ！彼女への煩悩なんて常に持ってるんだから、Aに言えるわけがないけど煩悩まみれだ。キスもしたいし抱き締めたい、もちろんそれ以上のことだって俺はしたい…でも彼女のことを待つと決めたからには耐えるしかない。とりあえず今はオフィスでキスしてしまわないためにもAは俺を可愛く見つめないでくれ。

「Aそんなにジッと見られると緊張しちゃって外せない」

『ご、ごめん拳くんっ』

彼女は慌てて目を逸らしてジッと待っていてくれる。あ、耳が赤くなってて可愛い。たぶんこの距離にドキドキしてくれてるのだろう。あぁやっぱり抱き締めてキスしたい。ここはオフィス、仕事する場所、例え可愛い彼女と一緒にいてもオフィスだから、煩悩消えろ。そうずっと心の中で唱えながらボタンと格闘してた。何とか外れて安堵してるとAが何か神妙な顔して黙ったままだけど大丈夫かな？

「A大丈夫？気分悪くなってない？」

『え、大丈夫だよっ、少し考えごとしてた』

考えごとなら大丈夫かな？取れたよと伝えれば彼女はありがとうと微笑んで手櫛で髪を直している。必死でボタンを外そうとしてたせいかさっき気づかなかったシャンプーなのかシャボンの香りまで漂ってきてAがバスルームに…を想像しそうになって慌ててそれを頭から追い出した。自我を保とうと堪えた。

「ううんAの綺麗な髪が切れたりしなくて良かった」
　
　
　