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そこでガチャっとドアが開かれて拳くんが、わっ危なっと目の前の私をドアから守るように抱き締めてくれる。包まれた彼の温もりを感じて恥ずかしくて頬に熱が集まった気がする。彼の“まずい”って言葉が小さく聴こえた。まずい？何がだろうかと考えているとすみませんって声がした。
「福良さん、Aさん大丈夫ですか？」
「川上だったのか…ごめん俺たちもこんなところで話してたから…」
『痛っ』
「え、Aどうしたの？」
彼のポロシャツのボタンに私の髪が絡まって彼が離れようとしたときに髪が引っ張られてしまった。彼は直ぐに気づいてくれて、ごめんちょっと我慢してとボタンから髪を外そうとしてくれるけどなかなか外れない。
「とりあえずそっちのキッチンで外したらどうですか？ここ人通りますし」
『そ、そうですね。川上さんお気遣いありがとうございます』
川上さんは笑って別の部屋へと入っていった。今の拳くんとの距離のままここにいて他の人に見られるのは恥ずかしいから拳くんにキッチンで外してくれる？とお願いした。
「うん、このまま移動するから髪痛くないように離れないで」
髪が引っ張られないように彼に抱きとめられたまま今は誰もいないキッチンへと移動した。
「ごめんA、結構絡まってて時間かかるかも？」
『だ、大丈夫…何なら髪は伸びるからハサミで切っちゃっても』
「なに言ってるのAいま髪伸ばしてるでしょ？少しずつ伸びて来てるし、何よりこんなに綺麗な髪なんだからそれはダメ」
『あ、ありがとう』
即座に断られたけど彼とこの距離でずっとそばにいるのは困る。早く外してもらわないとさっきから胸がドキドキしすぎて可笑しくなりそう。ちらりと彼を見れば広い肩幅とか喉仏とかを見てしまって胸の鼓動が止まらない。更には彼の体温や匂いまで感じてきて、そんなことを考えてる自分が恥ずかしくなる。
ボタンを外そうと真剣な眼差しで格闘する彼。その顔を思わず格好良いなと見つめてしまう。パッと彼がこっちを見て少し照れた表情をしている。
「Aそんなにジッと見られると緊張しちゃって外せない」
『ご、ごめん拳くんっ』
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作者名：佐伯 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年9月7日 19時
