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彼はそう言って距離を詰めてくる。何となく後ろへ逃げようとしたらガシっと捕まって唇を奪われた。口内に侵入してきた舌が私の舌を絡めとる。震えるような気持ちいいキスをされて身体の奥から熱くなる。唾液が絡みつく音が響いてそれしか考えられなくされる。彼に翻弄されもっとキスが欲しくなる。チュッと音を立てて彼の顔が離れていった。もっとキスして欲しいのにと熱を孕んだ瞳で彼を見てしまう。
「ふふっA色っぽいね、可愛い」
『け、んくん…、キス、したい』
「続き、して欲しいの？」
声に出さずにこくんと頷けば彼はダメと答える。
『ど、どうして？』
「嫉妬したところ詳しく教えてくれたら続きしてあげる」
『えっ！？そ、それはっ』
そんなこと言われて焦っていると彼が唇に触れてきてビクッとしてしまう。そのまま艶っぽくなぞられて胸が高鳴る。
「可愛いここにキスしたいな、でも教えてくれないなら出来ないな〜残念だね」
離れていく彼の服を思わず掴んだ。なぁにA？と聞かれて顔を覗き込まれる。彼の唇に私のリップが少し付いているのが目に入った。それがさっきのキスを思い起こさせてきてキスが欲しくなる。
『あのっ、えっと……拳くんが』
「俺が？」
『か、可愛かったのっ』
「ん？ＣＭ可愛いところなんてあったっけ？俺普通にしてたつもりだけど」
『ＣＭじゃなくて、ヒルナンデスのヘアピンで前髪止めて眉マスカラを塗ってる拳くんが可愛くて、あんな拳くん他の人に見られたくなくて……そ、それに』
「それに？」
『ＣＭだって爽やかで格好良い拳くんがいて……可愛い拳くんや格好良い拳くん見てファンが増えるの嫌って思えて、でも仕事は応援してるから、こんな風に思っちゃう自分も嫌で…』
ギュッと抱き締められて拳くんの香りに包まれた。
「そっか、Aがそう思ってくれてるの嬉しい。俺なんていつも嫉妬してるし先週末だって甘い香り振り撒いてるのに嫉妬したし」
『ふ、振り撒いてないよっ、それにあのとき私は少し電車に乗っただけだよ。それに比べて拳くんは全国に魅力的な拳くん振り撒いてる…って違う、こんなこと言いたいんじゃなくて、ごめんっもう何か忘れてっ』
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作者名：佐伯 | 作者ホームページ：
作成日時：2022年9月7日 19時
