pair days -vol.8-

どれが似合うのか？1 ページ30

　
side 兄
2022/4上旬
　
　
　
「藤さん、ふくらさんどうしたんですか？」

「なんだって皆俺に聞くのよ？」

「いやだってあれ…話しかけ辛くないですか」


こうちゃんの目線の先には花でも飛ばしてるんじゃないかってくらいご機嫌な感じで動画編集をしているふくらさんがいる。時折ニヤニヤしているせいか皆それを遠巻きに見ていて朝からずっと俺は代わりにふくらさんに何があったのか答えている。


「昨日式場でドレス試着して衣装を決めたらしいよ来月ＷＨＡＴの大会終えたら前撮りするんだってさ」

「なるほど〜Aさんのドレス姿見たからふくらさんあんな感じなんですか」

「前撮り楽しみだね！あ、藤枝藤枝〜Aちゃんのドレス姿の写真どうせ持ってるんでしょ？見せてよ、私見たい！」

「あ、藤さん俺も見たいです」


山森さんが決めてかかってくる。どうせ持ってるってなんだよ！いや当たりだけどさ！妹の一生に一度の晴れ舞台に着る衣装なんだから俺がチェックして当然だよね？


「いやもったいなくて見せられないな」

「ずるいっ！前撮りとか本番の写真より前にチラ見せしてお願い」

「そうですよ、見せてくださいよ」

「仕方ないな〜ちょっとだけですよ」

昨日Aから送られてきた写真をスマホに表示させて印籠の如く２人に見せる。おぉと声をあげる。

「Aさん綺麗ですね」

「Aちゃん可愛い！めちゃくちゃ似合ってる！ああふくらさんには勿体ない。私の嫁にならないかな」

「ちょっと聞こえてますよ、Aが好きなのは俺なので山森さんのお嫁さんになることは絶対にないです」

聞こえてたらしいふくらさんがこっちをじろりと見てから笑顔で否定している。

「悔しい〜！藤枝やっぱりAちゃん妹に頂戴！」

「んなのダメに決まってるでしょ！！いい加減あきらめてください」


諦めきれない山森さんはぶつくさ言っている。いくらAが嫁に行ったとしてもこの立場は譲れない。ぶっちゃけ配偶者は変わることあるけど兄妹は一生兄妹だしね！

あ、もちろん離婚なんてことになったら俺は一生ふくらさんを呪う覚悟でいる。一応そんなことはないと信じてはいるけど。
　
　
　

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