pair days -vol.8-

新居探し ページ32

　
2022/4中旬
　
　
　
３月から始めた新居探し。不動産会社にピックアップしてもらった物件を２週に渡って内見している。今日行くところは２件。１件目は収納がいまいちだった。先週見たところもわりと良かったけど私は次の物件に期待している。写真で見た感じお気に入りのキッチンになりそうな予感。


『わっ綺麗だね』

「やっぱりリノベーションしたばかりだと新築みたいな感じだね」


セキュリティもしっかりしてそうなマンションでリビングも広めの２ＬＤＫ、収納もそれなりにあって何より私が気に入ったのはキッチンだ。パントリーも付いていて隅々までチェックしてしまった。


「Aウキウキしてるでしょ」

『だってこういうキッチンでお料理してみたかったの』

「ここにしようか」

『え、もっとよく見てから決めた方がいいんじゃない？』

「ちゃんと一通りチェックしたでしょ、収納もあるしリビングは南向きで日当たりもいいし俺は良いと思うけどな。オフィスにも近いしね」

『本当にいいの？』

「一目惚れしたって顔に書いてあるよ？俺はここでAと暮らしたい」

そう言って彼はキッチン内に入ってきてさらに私の耳元で囁く。

「愛する奥さんが毎日このキッチンで料理してくれるんでしょ？それって幸せだよね」


彼が笑顔でそう言ってくれて不動産会社の担当の方が離れたところでにこにこと微笑んでくれている。聞こえてはないだろうけど少し恥ずかしい。私もうんと頷いていた。

それから申込み、入居審査を経て契約することとなった。彼はＧＷに開催するクイズ大会が控えているし忙しくて今すぐには入居できない。入居前から家賃を支払うことにして家具や家電など揃えられるものは揃えてから引っ越ししてこようと言うことになった。

次は新居に合わせた家具探しだ。仕事部屋に置く本棚やデスクなんかは今使っているものをそのまま持っていけそうなので主にリビングや寝室のものを揃える。

彼は家具にあまり拘りはないと言っていたがベッドは広めのものが良いと話していてマットレスも良いものを選ぼうと張り切っていた。確かに睡眠は大事だよねと私が答えると彼は目をぱちくりさせてクスッと笑った。

え？と首を傾げると彼は耳元でごにょごにょと囁いて意味ありげに笑う。言われたことに頬に熱が集まるのを感じた。こんな家具売り場のど真ん中でそんなこと囁かないで欲しい。
　
　

　
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準備は着々と。何を囁かれたんでしょうね？
　

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