pair days -vol.3-

名前1 ページ18

　
side 兄
2019/7上旬
　
　
　
『もしもし拳くん？ うん』

『明後日ご飯どうかなと思って』

『そうなの？なら仕方ないですね』

『うん、お仕事頑張ってね』

『また電話します』

『え、あっ……私も』

『うん、また』


けん？誰だっけ？ああ、ふくらさんか。いつの間にやら名前呼びになってる。多少敬語は残っているものの前よりくだけた感じだ。電話を終えたAがくるりと振り返ると目が合った。


「ただいま」

『え、祥帰ってたの？』

「今帰ってきた」

『おかえり、ご飯用意するね』

キッチンに立つAに話しかけると、んーなぁに？と返事をする。

「いつからふくらさん名前で呼んでるの？」

『あ、聞いてたの？』

「正確には帰ってきたら聞こえた」

『聞かれたか〜この間の家に来てくれたときに…名前で呼んで欲しいって言われたの』

「へー付き合ってるのに固いなって思ってたからいいんじゃない？」

『固いって確かにそうだけど急には難しいでしょ』

「まっAならそうか。でもさっき聞こえたとき一瞬けんって誰？とか考えちゃった」

『誰ってひどいな』

普段のふくらさんを思い浮かべる。絶対拳って感じしないよなと苦笑する。

「拳って名前のイメージないんだよな、あの人。ふくらさんはふくらさんって感じ」

『分からなくもないけど』

「ほらAだってそう思ってるじゃん」

『拳くんはどちらかと言うと柔らかい雰囲気だからそれでじゃないかな？』

「こぶしとは違うよな、まっ順調みたいだから良かったよ」

『順調だけどね。少しだけ…毎日拳くんに会える祥が羨ましい』

「おぉいっちょ前に悩んでますな、お互いに大学と仕事で忙しいから仕方ないじゃん」

『夏休みになったら私も都合つけやすいから会える頻度増えるけどね、休み明けたら卒論が待ってるから今より会えなくなるかも？』

「でもAは就活してないからまだマシじゃない？」

『それはそうなんだけどね』


Aは卒業したあとは小説以外にもコラムだとかそっち方面の仕事を増やすらしい。ＱＫライターも続けるみたいだから完全に物書き一色になるな。

その内伊沢さんみたいにコメンテーターとかやりださないかちょっと心配ではある。まあ今から考えても仕方ないけど。
　
　
　

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