7.レゾンデートルを教えて ページ28
side.kwmr
「入るよ」
「……河村、どうしたの」
カジノの襲撃を3日後に控えた深夜2時。
起きてるだろうと思って足を進めた医務室は案の定明かりが着いていて、真剣な顔をしていたAは僕を見る。
「いや、向こうのスパイ活動のほうは大丈夫かなって。ほら、結構今忙しいじゃん」
「………あぁ。いや、大丈夫。予め忙しいとも伝えてあるし、向こうに渡す情報なんて最低限なんだから」
「なるほどね。……よく首切られないね、それで」
「まぁ、ここはガード固いし、入り込めるスパイなんて私くらいだからね〜。物理的に切ってやるわ、首なんて」
約束を交わしたあの日から。
Aは筋肉をつけ、どうしたらいいかと考えている合間に水商売をして情報収集やハニートラップを学んだ。
ひと皮もふた皮も剥け、より女の武器を上手く使いこなすようになった彼女には本当に尊敬しか出てこない。
壊れずに、強かに、虎視眈々とこの時を狙っていたのだ。
向こうの会社＿＿＿＿＿Aと呼ぶことにしよう。
社名、長いし。
そんな会話をしたのも、深夜の僕の家だった。
Aへの潜入に成功、金髪の帰国子女というなんとも難しい役を演じ、そしてQuizKnockへのスパイ活動の座を勝ち取って。
学歴の偽造、偽の国籍、偽の名前。それらをこちらで用意して、如何にも初対面だと言うように入社試験もした。
そうして完璧に用意した舞台で、事情を知る僕と、A、そして伊沢の協力も仰いで。
奴らを絶対に潰すって、二度と笑えなくしてやるって、誓ったのだ。
「河村、念の為報告資料の確認お願い。これ明日送るから」
「了解。……はは、それらしく薄っぺらいことが書いてあるね」
薄すぎず、濃すぎず。その調整が得意なAは、本当にスパイに向いている。
「………入ってきなよ、山本」
暫く扉のほうを見ていたAがそう言葉を投げたのは、また突然の事だった。
山本、って言った？
僕も釣られて扉のほうを見ていれば、やがてゆっくりと、遠慮がちに扉は開かれる。
「それらしく薄っぺらいこと、のあたりから居たよね。どうした？怪我した？」
Aはにこやかだった。
反面。
山本は少し目を見開いたまま、僕とAをチラチラと見比べている。
「………はい、盗み聞きするつもりは、なくて」
「あはは。いーのいーの、大した内容じゃないもの。どうした？」
堪えるな、こんなはぐらかされたようにされたら。
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See.(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます。他の作品まで見て下さりとても嬉しいです！めちゃめちゃ励みになります、更新頑張りますね！ (2020年8月16日 23時) (
レス) id: 1d0369df29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - こんばんは、もうひとつの作品、[QK] 錯 視 世 界 に て 、も楽しく拝読させていただいております、ゆゆです！本作もとても面白い作品で更新が待ちきれない！ってくらい気に入っております笑(決して更新を急かしているわけではございません！) See.様、応援してます！ (2020年8月16日 22時) (レス) id: 91c48177af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：See. | 作成日時：2020年8月15日 22時
