1-3 ページ3
「あ、てか丁度良かった。今日の夜あたり時間取れる？」
オムライスの半分くらいが胃に入った後、何気ない日常会話が終わり、真剣な顔のふくらがそう聞いてきた。
「夜……須貝さんの包帯巻き直したら大丈夫だけど」
「え！もしかしてあの爆発須貝さん？」
隣で山本が驚いたように私を見る。
そういえば須貝さんの実験室と山本の研究室は近かったっけ。
バカ広い部屋に響き渡るほどの爆発って、須貝さんよく火傷で済んだな。
「そう。手首に火傷しただけだったよ」
「ならよかった〜！」
「……で？なんか話あるんでしょ？」
会話を一区切りして、再びふくらに向き合うと、彼はこくりと頷いた。
「1ヶ月後までに作って欲しい薬品あって」
「なるほど」
つまり、また新たな任務だ。またひとつの組織か会社が潰れるということ。
「まぁいつも通り自白剤と、あと今回は大量の睡眠薬と鎮静剤」
「…鎮静剤？」
睡眠薬はまぁ分かる。無関係な人を眠らせておくことはよくあるし。
山本も伊沢も手を止めて、ふくらの話を聞き始めた。
「今回潜入するのはカジノ。薬キメてる奴らって厄介だから」
今度は伊沢が言葉を発した。そりゃ必要だわ。なにしてくるかわからんし。
「じゃあ、僕が作るもんは無さそうかな〜」
山本は少し残念そうにそう呟いて、オムライスを口に入れる。……そうだね、いくら明るみに出たら困るような人達でも殺すことないもんね。
「ま、そこのカジノ潰せたら今度は大元の組織潰しに行くから。その時は山本に沢山頼むかも」
ふくらは和やかに笑った。話してる内容は1ミリも和やかじゃないのに。
「ほんとに！やった、試したいやつあったんですよ〜」
山本も笑っている。無邪気な可愛い笑み。言ってる内容1ミリも無邪気じゃないし可愛くないけど。
「あれ………大元の会社、って？」
カジノ、と言えば表向きはクリーンな有名な会社だったりする。それこそ金融機関とか、たまに子供に大人気のお菓子製造会社ってこともあるし。
「＿＿＿＿＿＿」
伊沢の静かな声に、私は動きを止めた。その会社名には、聞き覚えがある。
「……なんの会社なんです？それ」
ただ、世に出てくるような会社では無いけど。
「さぁね。ただ、あんまり良くない噂ばっかりだよ」
伊沢は吐き捨てるように呟いて、味噌汁を啜った。
ほんの少し重くなった空気、私も会話を止めて、冷めてきたオムライスを口に入れる。
…………なるほど、ね。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 186人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「QuizKnock」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
See.(プロフ) - ゆゆさん» コメントありがとうございます。他の作品まで見て下さりとても嬉しいです！めちゃめちゃ励みになります、更新頑張りますね！ (2020年8月16日 23時) (
レス) id: 1d0369df29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - こんばんは、もうひとつの作品、[QK] 錯 視 世 界 に て 、も楽しく拝読させていただいております、ゆゆです！本作もとても面白い作品で更新が待ちきれない！ってくらい気に入っております笑(決して更新を急かしているわけではございません！) See.様、応援してます！ (2020年8月16日 22時) (レス) id: 91c48177af (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：See. | 作成日時：2020年8月15日 22時
