夜空に煌めく炎色へ - kwmr ページ9
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「ねぇ、あんま遠くまで行かないで」
「え、あ、ごめん」
人混みを掻き分けて、ほんの少し追いつかない分の距離を縮めた。
きゅ、とAの浴衣の袖を掴んで、息を整える。
「…あ、向こうにチョコバナナもある！」
「だからぁ……」
「ご、ごめんって…！楽しくなっちゃって……」
「………ほんと、僕から離れないで」
Aは楽しくなったり目的が出来ると、足早になって一人で行動するような子だった。
その行動力と、咎められて困ったように笑うその顔にも惹かれてしまった僕も僕だけど。
「じゃ、手繋ご。ね？」
「……うん」
浴衣の裾を掴んでいた僕の手を、緩やかに手と手で繋ぎ合わせる。
白くて小さい華奢な手、握りすぎたら壊れそう。なんて。
「はい、じゃあこれで良いよね？さ、行くよ〜」
Aは溌剌に笑って、僕の手を引っ張って先へ進んだ。
……まぁでも、先程よりかは緩やかな足取り。
ふわりふわりと揺れるAの、可愛くセットされた髪。結び目に飾られた浴衣と同じ淡いピンクの花が可愛いらしい。
「……A、あと少しで花火だって」
チョコバナナを買って、漸く僕の隣を歩いてくれるようになったAにそう伝える。あちらこちらからは客引きの元気な声が聞こえた。
この花火の話題も、たった今通りかかったカップルの話が聞こえてきたからで。
「そうじゃん！人少ないとこで見よ！」
案の定Aは顔を明るくして、上目遣いで笑う。
ひとつひとつのことに表情を変えて、楽しそうな彼女が本当に好きだ。こういう行事の時に、毎度思う。
「あ……ねぇ、口にスプレーシュガー着いてる」
「うそ！……あ、これか」
口周りを指先で確認して、淡い黄色のトッピングを取った。チョコはわかるけど、スプレーシュガーなんてどうやったら着くんだろうか。
「ちょ、笑わないでよ」
思わず笑ってしまった僕に、Aは恥ずかしそうに僕を睨む。
「ははっ。ごめんごめん、ドジだなって思ってさ」
口元を手で隠して、くつくつと笑いが止まらない。
「もう………あ」
Aの視線が、僕より遥か上方へと注がれる。嗚呼、もう花火の時間だ。Aの顔に、僕の視線横に、鮮やかな色が弾ける。
大きな爆発音の後パラパラと散っていく様を、振り返って見届けた。
そこそこ人の少ない所に到着して、腰を下ろして。
「………綺麗だね」
こんな時ばかりは静かになるAも。
「……綺麗」
＿＿綺麗だよ。
8月7日のコンビニにて ｰ fkr→←純金製の水曜日 ｰ 8
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See.(プロフ) - ゆゆさん» 初めまして、コメントありがとうございます。ゆっくり気ままにやってきますのでよろしくお願いしますー！ (2020年8月12日 9時) (
レス) id: 1d0369df29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - はじめまして！こんばんは〜！See.さんの小説いつも楽しく読まさせていただいてます！まだ読みはじめたばかりですが、大好きなお話集なのでこれからも応援してます！頑張ってください！ (2020年8月11日 22時) (レス) id: 91c48177af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：See. | 作成日時：2020年7月30日 18時
