忘却性の日曜日 ｰ 5 ページ5
「先日は本当にお世話になりました！」
Aさんが僕の家に泊まった日から3日後、彼女は再び僕の家の前に居た。
雑貨屋の紙袋には貸した服が入っていて、もうひとつの紙袋には有名な洋菓子店のケーキボックスが入っている。
「服、すぐにでも返せたら良かったんですけど仕事が終わらず…」
「いえいえ、わざわざありがとうございます。…鍵、見つかりました？」
「はい、なんとか。デスクの棚の中に入ってまして」
Aさんは恥ずかしそうにはにかんだ。
「それに、お菓子まで」
「いえいえ！お礼、と言いますか。…他になにかありましたら、是非言ってください。」
本当に助かりました。ともう1度頭を下げる。
ここまでお礼を言われたら、もう十分なんだけどな。
「ここまでして頂いて、むしろ貰いすぎなレベルですよ！…全然大丈夫です、ありがとうございます」
「そ、そうですか……？でも、何かあったら是非言ってください」
Aさんが真っ直ぐに僕を見る。
ひとつ、だけ。
……僕は、自身の手をキュッと握りしめてから、少しの躊躇いの後に口を開いた。
「…あ、の。連絡先、良かったら交換しませんか」
声は震えていないだろうか。
「ぇ……も、もちろん！」
Aさんはびっくりして目を見開き、その後に柔らかく微笑んだ。
「……はぁ〜…」
Aさんのアイコンを眺めて早5分。
なにかメッセージを、とは思うのだが中々送れず。
よろしくお願いします？違うな。
良かったらご飯でも？違うな。
……う〜ん…。
悩みに悩んでいると、そこに置いておいた貰ったばかりのケーキボックスに目がいった。
《ケーキ、ありがとうございました》
《美味しいです！》
勢いのままに送信して、そのまま直ぐにスマホを伏せる。
気を取り直して、ケーキボックスの中から艶々と輝くマロンが魅力的なモンブランを取り出した。
ゆっくり口に入れると、濃厚なマロンクリームが美味しくて、ほんわかと幸せな気分になれる。
「………ん？」
ぼーっと部屋を見ていれば、ここ3日で見慣れはしたが本来あるべきではないものを見かけた。
「…返すの忘れたな」
あの日、洗濯をしてシワにならないように掛けたままのフォーマルな私服。
白のリネン生地で出来た詰襟ブラウスと、淡いピンクのスカート。
この件も連絡しよう。返信が来たあとで。
少なくとも、また会える機会が出来たと少しばかり嬉しくなった。
＿＿＿その時は、それだけで幸せだったのに。
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See.(プロフ) - ゆゆさん» 初めまして、コメントありがとうございます。ゆっくり気ままにやってきますのでよろしくお願いしますー！ (2020年8月12日 9時) (
レス) id: 1d0369df29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - はじめまして！こんばんは〜！See.さんの小説いつも楽しく読まさせていただいてます！まだ読みはじめたばかりですが、大好きなお話集なのでこれからも応援してます！頑張ってください！ (2020年8月11日 22時) (レス) id: 91c48177af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：See. | 作成日時：2020年7月30日 18時
