クズなきみがすきだった ｰ 5 ページ32
*
「ねぇ福良、大丈夫？具合悪い？」
「………休める、とこ……」
如何にも��具合悪いです��オーラを出せば、俺を信用しきっている馬鹿なAはホテルに連れていってくれる。
男の醜さなんて知ってるはずなのに、ここしかないと言ってご丁寧にそういうホテルに。
「ちょっと、ほんとに大丈夫？水飲む？」
「………Aはさ、なんで急に変わっちゃったの」
ベッドに腰掛け、水を差し出す手を無視した。
「変わるのが遅かっただけ。私も人間なんだから、いずれ……」
＿＿＿＿＿＿我慢、出来なかった。
Aの腕を力強く引いて、体格差を利用し、ベッドに押し倒す。
男の醜さを知ってるAは、初めて俺に恐怖を孕んだ瞳を向けた。
大きく見開かれた目には、醜い俺が映る。
なにも見たくない、僕を怖がるAなんて、見たくない。
細い手首を片手で拘束して、邪魔な眼鏡を外し、乱暴にキスをした。
今までの全てを掻き回すような、雑な、それでいてしつこくまとわりつくようなキスを。
酸素はどんどん薄れ、やがて耐えきれなくなったAが僕の胸板を押した。
顔を上げる。
組み敷いたAは案外小さくて、最初からこうすればよかったのかな、なんて。
「福良、私ね、私、初めてだったの。初めてこの人と幸せになりたい、もう、傷なんて付きたくないって、そう思ったの」
泣きそうな、消えそうな、か弱い声。
傷1つ付いてなかったんじゃない。
傷を隠していただけだった。
けれども、もう遅い。全てが、遅い。
俺が、彼女の抱えていた傷に、このどす黒い感情の名前に、彼氏の存在に、気付くのが。
「もう、遅いんだよ」
驚くぐらいに低い声が出た。
地を這うような声はAの力を弱め、彼女は泣きそうな顔で僕を見る。
「置いてかないでよ、俺だけ。」
「俺の知らないAに、変わろうとしないで……」
Aは頷かず、イエスとも答えず。
けれども抵抗はせずに、俺の頬に手を添えた。
「………1回だけ、ね」
もう、なんでもいいよ。
Aにとっての面倒事なんだろうけどさ、俺には一世一代の告白だったんだよ。
不器用だけど、俺、上手く伝えらんないからさ。
もう、いいんだよ。
後に戻れないくらい、Aが後悔するくらい、彼氏と幸せに過ごす中で時々俺を思い出すくらい。
ぐちゃぐちゃにすればいいんでしょ。
もう、戻れないんだよ。
.
続く
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See.(プロフ) - ゆゆさん» 初めまして、コメントありがとうございます。ゆっくり気ままにやってきますのでよろしくお願いしますー！ (2020年8月12日 9時) (
レス) id: 1d0369df29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - はじめまして！こんばんは〜！See.さんの小説いつも楽しく読まさせていただいてます！まだ読みはじめたばかりですが、大好きなお話集なのでこれからも応援してます！頑張ってください！ (2020年8月11日 22時) (レス) id: 91c48177af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：See. | 作成日時：2020年7月30日 18時
