窮 鼠 噛 め よ 、 猫 ｰ 2 ページ25
.
「………A？」
そんな可愛くない後輩を見つけたのは、深夜の公園。
オフィスから少し近めの公園、ブランコに座る不審人物に驚いたところ、見慣れた顔だったのでさらに驚いた。
ジャリ、と歩を進めるが、Aは顔を上げない。僕の問いかけにだけぴくりと反応したが、それ以上は何も動かず喋らず。
すぐそばまで歩いてくると、彼女は俯き泣いていたことに気付いた。
普段は可愛くない生意気な後輩が、しおらしくしているところにまた驚いて。
そして、戸惑った。
「ハンカチ、要る？」
Aはふるふると頭を横に振る。
顔すらあげないのは、僕に顔を見られたくないからだろう。全身で 帰れ というオーラを発していることに気付いたが、僕は隣のブランコに腰かけることにした。
「……なにしに、きたんです」
相変わらず可愛くないその言葉の羅列は、ブランコに座って3分くらいが経過した頃。
……いや、本当は数秒かもしれないけど。
僕は夜空を見上げたまま、んー、と少し考える。そうだ、僕どうしてブランコに座ったんだろ。
「可愛くない後輩が泣いてたから、かな」
飾らず、強いて言えばこれかなという答えを返す。彼女は鼻を啜った。
普段はうるさいが、泣く時はこんなにも静かなのか。
「………可愛くないから、泣いてたんですよ」
＿＿＿＿＿僕はAのほうを向いた。
彼女は顔を上げて、くしゃくしゃに泣いた顔で僕を見ている。
その目は少し鋭いが、アイシャドウのラメが街灯に照らされ、涙も相まって少しばかり綺麗に見えた。
「なにそれ。……振られた、とか？」
僕の想像力ではこれが限界。彼女のくしゃくしゃ顔を見て様子を伺っていると、Aはまた顔を背けた。今度は俯かず、正面を見据えている。
「3年付き合ってた彼氏に浮気されました」
「……そりゃまた、難儀な」
てか、彼氏居たんだ。へぇ。
「まぁ倦怠期でしたけど。浮気は無いでしょ、犯罪ですよ」
少し落ち着いたらしいAは、流暢に悪態をつき始めた。いつも通りの彼女に、どこか安堵した自分が居る。
「別れたの？」
「別れましたよ、付き合ってらんないし」
「今も好き？」
「全然。酷い目に合えば良いのにって思います」
そこまで言い切ると、満足したのか笑みを浮かべた。僕の方を向いた時、嗚呼いつものAだと確信する。
ほんの少し、胸が高鳴った。気がして。
「……ねぇ、僕と浮気する？」
だから、口まで滑ってしまった。
クロートーへ願いを！ ｰ hys→←窮 鼠 、 猫 を 噛 め ｰ kwmr
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 78人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
See.(プロフ) - ゆゆさん» 初めまして、コメントありがとうございます。ゆっくり気ままにやってきますのでよろしくお願いしますー！ (2020年8月12日 9時) (
レス) id: 1d0369df29 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - はじめまして！こんばんは〜！See.さんの小説いつも楽しく読まさせていただいてます！まだ読みはじめたばかりですが、大好きなお話集なのでこれからも応援してます！頑張ってください！ (2020年8月11日 22時) (レス) id: 91c48177af (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：See. | 作成日時：2020年7月30日 18時
