きっと、この先もずっと。−５−【川村壱馬】

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『……私、ずっと平気だと思っていたんです。壱馬くんが忙しくて会えない期間があっても、連絡が取れないわけじゃないし、って』







壱馬「うん」







『……でも、平気じゃなかったです』







そう言い、眉尻を下げて情けなく笑う。







『何も出来なくなるほどダメになっちゃう、なんてことはさすがになかったけど、常連のお客さん何人かに“元気ないですね”って声かけられちゃうくらいにはくらってたみたいで。ふふっ』







正直驚いた。







人前では弱い部分を見せようとしないAが、お客さんの前でも隠しきれなかったなんて。







それに、会っていない間の連絡では、よそよそしかったものの寂しがっている印象がそんなになかったから余計にだ。







『ただ会えないだけじゃなくて、最後に会えた日がちょっと寂しい感じになっていたから、思ったより弱っちゃったのかもしれないですけど』







壱馬「……もう電話中にちょっかいは出しません」







『ふふ。私も、注意の仕方には気を付けます』







あの日のことはもう謝ることはやめた。お互い永遠に謝り続けるだろうから。それを分かってくれたからか、Aももう謝ることはなかった。







『連絡してから来ることも考えたけど、ちょっと驚かせたいなぁって思って。言わずに来ちゃいました』







壱馬「ほんまさっきびっくりした。気付いたら目の前にAおんねんもん」







『ふふっ。え！って私に気付いた壱馬くんの顔、マスクしててもびっくりしてるの分かって嬉しかった。作戦成功！って』







無邪気に、ちょっといたずらっ子のような笑顔をしながら話してくれる。







壱馬「まんまとやられました」







素で驚く自分を見られたのがちょっと恥ずかしい気もするけれど、こんなに嬉しそうに笑ってくれるならもうなんでもいいや。







壱馬「俺も、一瞬でもいいから時間作って会わなそろそろ無理ってなってたから、今マジで幸せ」







彼女に体重を乗せるように抱き着くと、俺の重さに耐えられずソファーへと二人で倒れ込む。







『ちょっと、んふふ』







壱馬「ふふ」







Aに覆い被さるようになって、そんな状況に笑いながら肩をぽんと叩いてきたA。







一瞬触れるだけのキスを唇に落とすと、ふふ、と微笑んでもう一度と目で求められた。








望み通り、もう一度そっと唇を重ねたら。







静かな甘い夜が、始まった。

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