きっと、この先もずっと。【川村壱馬】

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すっかり食べ終わった頃。まだAさんはあちらこちらへと休まる暇はなさそうだった。







今日は帰ろうかな。







帰り支度をして、レジ前に立つ。







壱馬「お会計お願いします」







『はい、ありがとうございます』







ちょうどこちらに戻ってくるところに声をかける。







『今日、あまりお話できなくてすみません』







壱馬「いえ。忙しいのはいいことですから」







レジに表示された金額を確認して、細かいお金が財布の中になくて。お釣りが面倒になってしまうけど、と五千円札を出した。







壱馬「カレーはもちろん、ナムルが美味かったです。野菜苦手でも食べられました」







『わ、よかった。普段はサラダなんですけど野菜苦手って前に仰ってたから』







え。







つまりあれは、俺だけの特別な組み合わせだったってこと…？前に言ったこと覚えててくれて…？







壱馬「まじか。お気遣い嬉しいです。ありがとうございます」







『余計なお世話かなと心配だったので、そう言っていただけて安心しました』







ふっと表情を綻ばせて、微笑んだAさん。やっぱり俺はこの笑顔好きだなぁ、と改めて感じる。







この笑顔、これからも見せてもらえるだろうか。







温かい気持ちになって忘れそうになっていたけど、俺には今日、Aさんに渡そうと決めたものがあるんだった。







壱馬「あの、」







ポケットに忍ばせた二つ折りにしたメモ一枚を取り出して、彼女に差し出す。







それがなにか分からないまま彼女はそれを手に取り、俺の手から離れたのをちゃんと確認して。







壱馬「それ、俺の番号です。いつでもいいので気が向いたら連絡ください」

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