きっと、この先もずっと。【川村壱馬】

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そんな考えが読まれていたなんて恥ずかしいなと思う反面、そうやって俺のことを考えてくれている時間が今日までのどこかに少しでもあったという事実だけで俺はこんなにも嬉しい。







『また少ししたらご注文伺いますね』







そう言って今日は少し忙しそうに言葉を離れて別のお客さんのもとへ行ったり、台所で料理を用意していたり。







この前とは違って次々にやるべきことをこなしていくAさんの姿は素敵で、かっこよく見えて。ついつい目を惹かれた。見ていたくなった。







注文を決めることも忘れてつい見とれてしまっていたためか、その視線に不意に気付いたAさんはこちらを見て。







『あっ、お決まりでした？』







壱馬「あ、いや、すみません、まだです。決まったら呼びます」







手を止めてこちらに来ようとするのがわかったので、慌てて静止した。忙しいのに無駄足踏ませてしまうわけにはいかない。







はい、と返事をされ、また台所で料理を作る手を動かし始めた。







このままじゃ永遠に決められないまま彼女の姿を見るだけの男になってしまいそうだった。







しばらくメニュー表を眺めて、店内の様子を伺って、Aさんの手が空きそうなタイミングで声を掛けた。







『お伺いします』







壱馬「キーマカレー、お願いします」







『かしこまりました』







壱馬「お願いします」







会話は硬くて形式的だけれど、ちらりとお互い視線を合わせてはにかむ二人の姿はそんな会話と反して柔らかい雰囲気だった。







他の人ともこんな風に近い距離で優しく微笑みながら会話をしているのかと思うと、妬けるな、なんて。俺もそんなこと言える立場じゃないのに。

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