蛇の這う魔酒・10年間編

お隣失礼 ページ9

マジックショーの会場はまるで完全自由席の大きな映画館、もしくはオーケストラコンサートの会場のようだ。
世界的マジシャン・黒羽盗一のステージとあって並の広さではない。二階席どころか三階まであるな。

さて、俺は今日になって黒のハーレーを見てしまったからな。マジックショーとは別に少々機嫌がいいんだ。


あぁ…いた。ハーレーの持ち主。
日焼けで黒と金がまだらになったブロンドをアップにして明るいルージュをあしらった若い女性に“変装”してる、

ベルモット


俺は今はスッピンである。
当たり前だな、組織の関係の無いところで変装する意味はない。

だが、俺と彼女には縁がある。

数十年前、まだ蕾のようなレディだったシャロン・ヴィンヤードは素顔の俺に出会った。
今と何ら変わらぬこの顔を。


……とはいえ、もう数十年経ってる訳だし、たった数日だけホテルの隣室だったり観光先の街中でバッタリ会ったりしただけなんだけど。



だからまぁ……(わざと)隣に座ったりして話しかけても大丈夫だよきっと！…多分。


「お隣、失礼しても？」

「えぇ、どうぞ…、…！」

え、
何、その反応。

ショー直前の歓談→←黒のハーレー

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