蛇の這う魔酒・10年間編

とある張り紙 ページ6

あれからすぐにラヴァンドはクレオメから昔の写真を見せてもらったせいか、俺を訝しげに見るようになった。
まぁ、それに関しては別に構わない。

何せ可笑しいのは年を取らない俺の方だからな。
むしろ疑問も抱かずにいる俺の親族らは特殊だろう。理解を得られて有難い限りだが。


「さて、それじゃあ俺もそろそろ借り家に行こうかな。何か用があれば気軽に電話してくれ」

俺が座っていたソファから腰を上げると、そっと腕を掴まれた。

「もう行ってしまうのか、A？まだ居てくれたら良いものを」

「クレオメ、惜しんでくれるのか。だが家の荷解きもあるからな」

そういうと、クレオメは腕を優しく寂しげに手を離し、ソファから腰を上げた。
玄関までだが見送ってくれるらしい。

リリィ&リコリス双子も、ソフィとカトレアも玄関まで送ってくれて暖かい気持ちになりながら俺は邸宅を後にした。

そうして俺の住処になったマンションに戻ると、マンションの掲示板に、気になる張り紙が貼られていた。

日本語訳すると、
『Mr.トーイチのスペシャルマジックショーワールドツアーinカナダ・オタワ！』

写真にはかの名マジシャン・黒羽盗一。

日付は次の週末。
まだカナダに来たばかりで予定は何も入っていない。
ふむ、せっかくだから観に行きたいな。

黒羽盗一は、あと2年以内に殺されてしまうのだからな……。

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