蛇の這う魔酒・10年間編 (ページ22)

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幸せについてページ22

「仮死状態にする薬。あんなもの、何に使う気なんですか」

エメリヤンくんは俺から目を逸らした。否、検体のマウスなど実験動物が最終的に放り込まれる焼却炉の方を見たのだろう。
エメリヤンくんの口振りには俺への疑問の他に、もっと複雑な感情が見えていた。

「俺が幸せになる為」

「Aさんが？」

「そう。俺が幸せになる為には、俺の大事な子を救わないと、俺の腕の中に囲わないといけないんだ。その為にあの薬が必要」

「その人はよっぽど不憫な方ですね」

「そうだな。悪ぅい組織に関わったことが、…それと、俺に好かれたことも？」

「後者は、貴方次第でしょう。
好きな人を助ける為でしたか。納得しました。お話してくださってありがとうございます」

エメリヤンくんは先程とは打って変わった様にリラックスした笑顔を見せた。
そして二人同時に手を握って開き、どちらももう痺れはないと確認すると立ち上がってまた席に着いた。

「それにしても人外ですね、Aさんは。その痺れ薬、軽い後遺症が残ってもおかしくないんですけど……」

「は？」

「主な原料は動物系の遅効性神経毒ですよ。効果時間も長いはず。だから僕は反撃されるとは思わなかった」

苦々しそうなエメリヤンくんの解説に、俺はピンと来た顔をしてみせた。

「毒、効かないのかな」

「さぁ……」

「色々飲んでみる？」

「やめてください」