Scabiosa (ページ4)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:792 hit

◇4◇ ページ4

．

潤「おはよ」

「おはよう」

あれから1週間。

俺は定位置を一つ前にずらし、彼女の隣で瀬尾教授の講義を受けるようになった。

潤「課題終わった？」

「もう提出してきた。松本くんは？」

潤「大体は終わってる」

「大体って (笑) 提出は明日だけど？」

潤「あと結論だけだし何とかなるかなって (笑) 」

彼女とは1週間で既に冗談を言い合えるまでの仲になっている。

あの日以来、彼女のあの瞳を見ることはなく、あれは気のせいだったのだと思うことにした。

2人で雑談をしているうちに瀬尾教授が入ってきて、彼女はノートを開いて板書を写し始める。

真剣な彼女を横目に、襲ってきた睡魔に身を任せた。

「松本くん」

揺さぶられる感覚に目を開けると、すっかり帰り支度を終えた彼女が、困ったような呆れたような顔で俺を見ていた。

「講義終わったよ」

潤「ぅん…、ごめん」

荷物をまとめて立ち上がると、彼女もギターケースを背負って後をついてきた。

潤「この後は？」

「友達と待ち合わせてるの」

潤「そっか」

「…じゃあ、ね」

小さく手を振って、彼女は左へ進む。

その後ろ姿を眺めながら、俺は翔くんの待つカフェテリアに行くために、右に足を向けた。