第36話『彼女なら』 ページ42
彩side
若武はみんなを見まわす。
「いつ招集をかけられてもいいように、みんな全力で役目を果たしてくれ。このふたつの事件を解決することは、どちらも我がKZメンバーである神崎を助けることになる。KZメンバーに手を出したことを後悔させてやるぞ!」
その言葉に、私たちは力強く頷いた。
杏奈ちゃんのために頑張ろう。みんながそう思っているのが伝わってくる。
そんな中、上杉くんだけが、どこか暗い表情で目を伏せていた。
きっと、杏奈ちゃんが通り魔に襲われたことを引きずっているんだ。
上杉くんが落ち込んでいたら、よく杏奈ちゃんが気づいて、さりげなく声をかけたりしてた。
今、杏奈ちゃんはいない。
杏奈ちゃんの代わりに、誰かがフォローした方がいいだろう。
できるかは分からないけど、私がやってみよう。
.
会議が終わって解散になると、みんながそれぞれ「お邪魔しました」と言って若武の家を出る。
私は家を出ると、自転車のサドルにまたがってペダルに足をかけている上杉くんに声をかける。
「上杉くん、」
上杉くんは半身だけこちらを振り返り、少し冷たい感じのする目で私をとらえた。
「何?」
私は言葉を選んで、慎重に口を開く。
「あんまり気にしなくていいからね」
上杉くんは、その目を鋭く光らせ、口元だけで浅く笑った。
「何が?」
誤魔化そうとしている。
「それだけなら、もう行くからな」
わっ、帰っちゃう!
去っていこうとする上杉くんの服を慌てて掴む。
上杉くんは、少しムッとしたように私を睨んだ。
「何だよ。言いたいことがあるなら、早く言え」
怒ってる上杉くんって、とっても怖い。
でも、ここで怯んでちゃダメだ。
杏奈ちゃんなら、こういう時なんて言うのかをよく考えるんだ。
きっと、ストレートに相手の真意に迫って、それから・・・。
「杏奈ちゃんが通り魔に襲われたのは、自分のせいだって思ってるでしょ」
確信をつくと、上杉くんは表情を強ばらせた。
「さっきも表情暗かったから、自己嫌悪に陥ってるんじゃないかって心配してたの。だから声掛けたんだよ」
上杉くんの唇が少し震える。
「声掛けて、どうすんだよ」
試すような聞き方だった。
私は、真っ直ぐに上杉くんの目を見つめる。
「私が上杉くんを慰める」
まっすぐに、自分の意思を伝える。
杏奈ちゃんなら、そうするはずだから。
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澪(プロフ) - ゆたんぽ。さん» えー!嬉しすぎます!ありがとうございます! (2022年4月19日 17時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
ゆたんぽ。(プロフ) - 初コメ失礼します。いや、面白すぎませんか?更新楽しみにしてます! (2022年4月19日 15時) (レス) id: 00d669ff5e (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 澪さん» いえいえ!本編も、オリジナルも、楽しみにしてるのっ! (2022年4月16日 20時) (レス) id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
澪(プロフ) - @白猫雪さん» ありがとうございます!とっても嬉しいです!これからも頑張って更新するので、よろしくお願いします! (2022年4月15日 23時) (レス) id: 7aa13dcf7f (このIDを非表示/違反報告)
@白猫雪(プロフ) - 更新楽しみ〜!KZのオリジナルめっちゃ好き!澪ちゃんも、更新頑張ってね! (2022年4月15日 21時) (レス) @page50 id: 23d1cff2e4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:澪 | 作成日時:2021年10月26日 22時