笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ41)

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第8話『社長』ページ41

杏奈side

「えっと」

小塚くんが言った。

「全然わかんないんだけど、アーヤ、訳してくれる？」

隣で上杉くんが無言で頷く。

彩ちゃんは自分ではうまく説明出来ないと思っのか、黒木くんに頼むように目を向ける。

「簡単に言うと、『アプリ甲子園』で3位になった砂原の実力に目を留めたフランスの富豪が子役金約5.5億円を出して、法人登記なんかの手続きをして、砂原を社長とする会社を設立したってことだよ」

社長！？

「日本でも最近、経済成長や産業の新陳代謝のために、十代の起業家を育てようって動きがあるんだ。経済産業省が後押しして、小中学生向けに起業家教育を進めたり、中高生向けにモデル校を作って会社設立のノウハウを教えたりする計画を進めてるとこだよ」

それって、とってもすごいことだよね。

「でも日本の『アプリ甲子園』って、まだ世界的に有名じゃないと思うけど、そのフランスの富豪って、よく見てたよね」

小塚くんが不思議そうにすると、上杉くんがなんでもないと言ったように眉を上げた。

「オタクなんだろ。多いらしいよ、フランス人に」

黒木くんがちょっと笑う。

「確かに多いけど、このフランスの富豪は、日本人みたいだね」

え、そうなの？

「日本人でフランスに渡って仕事をしていて、フランス国籍を取ったっていうパターンだ。マルセイユに本社を持っている貿易商で、IT関係の会社も経営しているって書いてある」

すごい！

日本で成功するのだって難しいのに、外国じゃすごく大変だよね。

そんな人から注目されるなんて、翔ってそんなにすごい人だったんだ。

「フランスの事情は、美門の方が詳しいと思うけど」

そう言いながら黒木くんは美門くんを見た。

「この富豪のこと、知ってる？名前は、シュン・サクライ」

美門くんが頷く。

「その人をフランスじゃ有名だよ。『フランス版あしながおじさん』って言われてて、恵まれない子供の支援に取り組んでるんだ。親がいなかったり、貧困家庭だったりする子供の為に、育英基金を作ったり、就職の為の技術指導や資金援助をしている」

シュン・サクライさん・・・。

どんな人なんだろう。会ってみたいな。

「CEOになったら、それで人生、ほぼ上がりだよな。もう受験しなくていいし」

上杉くんの口調はかなり羨ましそうだった。

「俺たちは、まだこれから大学、就職と、でっかい難関を2つも突破しなくちゃならないのにさ」

たしかに。