笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ36)

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第3話『私はどうでもいい』ページ36

杏奈side

それからホームルームが始まって、ルーム長である美門くんはその顔のままみんなの前に出てきて、司会をした。

みんなは口の中が見え、無くなっている下の前歯を見て、女子はみんなびっくりし、男子は気の毒そうに小声で囁きあった。

「歯、折られてんじゃん。痛そ」

「マスクかけてないわけがわかったよ。きっと血みどろなんだ」

「神崎は歯までは折られてなさそうだな」

「でも、女子なのに顔にあんな大きなアザつけられて、可哀想すぎだろ」

・・・うるさい。

教卓にいた薫先生が、心配そうな目で美門くんを見る。

「美門、無理しなくていいよ」

でも美門くんは、まるで聞こえていないみたいにそれを無視した。

ごく普通に振舞って、いつも通りにホームルームを終えた。

1時間目が終わって15分の休みが来ると、美門くんはサッとどこかに出ていき、男子たちは固まって話を始めた。

「ツバサの顔、元に戻るのかな」

「時間の問題。でも歯は、ダメじゃね」

「あーあ、美貌だったのにな」

「歯医者に行って義歯入れれば、元通りだよ。鼻柱折られてたら、ちょっと大変だったと思うけど」

「ツバサ、運動神経いいからさ、鼻は守ったんじゃねーの」

そこに、さっき教室を出ていった男子が戻ってきて報告した。

「バスケ部の他の2人、今、見てきたけど、ツバサほど顔酷くねーぜ。ボディも、そんなにやられてる感じじゃなかったし。どちらかといえば、神崎の方が顔の怪我酷い」

そんなに酷いかね・・・。

私は髪の毛でなるべくアザを隠す。

「ん、目的が金品なら、それさえ渡せば、普通、１、２発で終わるよ」

「きっと、ついでにやられたんだ。ツバサって超イケメンじゃん。だから気にくわなかったんじゃね？」

「そいで顔に、集中かぁ」

私は膝の上でぎゅっと拳をにぎりしめる。

美門くんが殴り返さなかったのは、きっと殴り返せば傷害事件になるから。

以前、美門くんは意外と喧嘩が強いって聞いたことがある。

バスケ部も活動休止になるかもしれないから、やられるだけやられていたんだろう。

でも美門くんはきっと、人一倍プライドが高いから、すごく悔しい思いをしたと思う。

「杏奈、大丈夫？」

「超痛そう。」

女子たちが私の周りに集まって心配してくれるけど、私は首を横に振った。

「こんな怪我、大したことないよ。私なんかより、美門くんの方がよっぽどひどい」

私の怪我なんかどうでもいい。

美門くんの心が、1番心配だ。