笑顔の仮面は知っている2【探偵チームKZ事件ノート】 (ページ25)

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第72話『脅し』ページ25

杏奈side

「あの、ちょっといいかな」

それまでずっと黙っていた小塚くんが、おずおずと口を開く。

「この庭を歩き回っていた東西関東建設の社長青池浩太、あの人もマダニにかまれてる可能性があるんだけど」

私たちはハッとした。

ほんとだ！

「フタトゲチマダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群に関しては、解明されていない部分が多くて、たとえぱ動物が発病するかどうかもまだ確認されていないんだ。人間同士でも、感染者の血液から感染することはわかっているけれど、咳やクシャミなんかの飛沫感染は不明」

認定された感染者が、日本中で55人っていう少なさだから、調査が進まないのか。

「青池が噛まれていたとすると、潜伏期間は1週間前後だから、来週には症状が出る。それまでに隔離して、入院させた方がいいと思うんだけれど、彼は秘密の動きをしていた訳だから、その感染について知っているのは僕達だけなんだ」

若武くんがパチンと指を鳴らした。

「やった！」

え！？

「それをテレビに売ろう」

なんてこった。

「もっといいことがある」

黒木くんが、艶やかな目に大胆な感じのする光をきらめかせた。

「それを材料にして、大々陸建設の社長加藤雅也を脅迫するんだ」

私は目を見開く。

なんてことを言い出すの！？

「おもしれーじゃん」

若武くんが身を乗り出した。

「どうやんの？」

黒木くんは、確信のこもった笑みを浮かべる。

「東都大学には医学部があって、加藤雅也と一緒の年に、すごい人物が卒業している。金田敏明だ」

それは誰。

彩ちゃんも知らないらしく、私たちが首を傾げていると、上杉くんが言った。

「日本のコッホって言われている医学界のエースだ。感染症研究の第一人者」

へぇ。

「金田敏明は、今、埼玉で病院を経営している。加藤雅也とは、『東都倶楽部』を通じて交流を持っているはずだ。同期生だし、お互いに各界のトップ同士だからね。俺たちは、加藤雅也を脅して金田敏明に連絡をつけさせ、金田の病院に美門を入院させる。美門に、最先端の治療を受けさせるためだ」

それ最高！

「脅しなんて、きかねーんじゃね？」

上杉くんは、半信半疑。

「だって明日になれば、国立感染症研究所が入って、スリーブのごまかしは、どっちみちバレるんだぜ」

黒木くんは片目をつぶる。

「ここは内緒にしておいて、今夜中にさっさと同意させて、美門を入院させてしまうんだ」