027-RM ページ27
＊
植物への水やりも兼ね、Aさんが屋上で
一緒に昼ご飯を食べるようになって
半月が経った頃。
じわじわと、異変は起き始めた。
『1年、クラスB。●● A。
至急、生徒指導室に来るように。
繰り返す。
1B、●● A。
至急、生徒指導室に来い。』
相変わらず聞こえない彼女のフルネーム。
もうこれには慣れた。
しかし彼女単体が指導室に
校内放送までして呼ばれるのは初めてだ。
何かした、という疑問も
普段品行方正な彼女には薄そうである。
昼にここへ来るのにも
しっかり許可を取ったようだし。
だから
「A、何かしたの?」
テヒョンの疑問は
至ってまともなもので。
多分俺だけじゃなく
全員が感じていたであろう疑問だった。
「さぁ?…では行ってきますね。
あ、グクくん。
もし私が休み終わるまで戻らなかったら
この弁当箱、教室までお願い。」
しかし当の本人は首を捻るだけ。
眉一つ動かさずに屋上を後にする。
「指導室がどんなとこか、
分かってないのかな?」
そのあまりに淡泊な様子に
思わずと疑問の声を上げるホソガ。
「えぇ?でも僕とジミナたちの指導を
形は違えど見てる訳だし…」
どういう場所かは知ってるんじゃないか、と
不思議そうに首を捻るジニヒョン。
そこで閃く一つの可能性。
「それです、ヒョン。
また妨害に呼ばれたとか?」
しかし
「それはないですね。」
その考えはマンネによって
あっさりと断ち切られてしまった。
「なんで言い切れるのグガ。」
「だって…テヒョニヒョン。
今日は何曜日で、誰が指導室にいます?」
あぁ、そうか。
頭の中で点と点が繋がる。
ジョングガに質問した張本人であるテヒョンも
気付いたようであ、と声を漏らした。
「今日は水曜日。
今日いる指導教員は俺らを指導した奴ら。
つまり、妨害しようがない。
寧ろ呼ぶ方が向こう側にとっては不利。
そういうことだね?」
「はい。」
こうなると話は完全に迷宮入り。
音楽室へ出ているユンギヒョンを除く
男6人が屋上に座り込み、頭を悩ませる様は
端から見ればきっと滑稽極まりないだろう。
と、スマホが震えた。
ピロリン、ブブブ、チャラリン♪と
一斉に幾つもの着信音が鳴ったので
どうやらグループへのもののよう。
「あ、ユンギヒョンからだ。」
一番に画面を開いたらしい
ホソガの端末をみんなで覗き込んだ。
そこには短く一言。
「…ん?なになに?
『拾い物した』?なんじゃこりゃ。
相変わらずだなユンギは。」
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