★つづき ページ45
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だからせめて、こんな一時くらいでは、
嘘でも良いから私を安心させてほしい。
そんなこと、言えるわけがないんだけれど。
「…でも俺は頑張るぞ。
Aと禰豆子がいる限り、生きないとな」
ポンと頭に手が置かれ、
慣れた手つきで優しく撫でてくれる。
ポカポカした太陽みたいなこの人は、
中にどんな辛い闇を持っているんだろうか。
だけどそれを微塵も感じさせない。
そんな所が、また私は大好きなんだけれど。
「だから、Aも頑張れ。
必ず俺達で鬼のいない世界を作るから!」
『…うん。この目で見るまでは逝けないね』
ねぇお願い。
鬼のいない世界なんていらないの。
平和な世界もなくたって良いよ。
ただ、私が死ぬその時まで君に傍にいて。
それが叶えばどんなものもいらないから。
私より先に死なないで。
これ以上私の世界から光を消していかないで。
だけど、現実は非情なもので。
「緊急招集───!! 産屋敷邸、襲撃!!」
最後の戦いは、君にとって最期かもしれない。
それを分かって送り出すのは、
どうしてこんなにも辛いものなんだろうか。
「行ってきます」
「行ってくるよ、また朝にな」
いつもみたいな挨拶すらもしてくれない。
お願いだから、帰ってきてよ。
祈り待つことしか出来ないなんて、
私はこれほど弱すぎる人間だったんだな。
「鬼舞辻無惨 討伐──!!」
長い長い、長すぎた夜。
それを越したのは私だけだった。
日が高く上った頃、彼が帰ってきた。
彼の刀、その1つだけ。
彼は写真が苦手だったから、
遺影になるような代物が全くない。
「…こんなもんに使われるなんてなァ」
あの日さんさんと光る太陽の下で、
私が描いた満面の笑みを浮かべる炭治郎の絵。
それが飾られたのは、
見事に咲き誇った菊の花の真ん中だった。
『…ほんとに、形だけになっちゃったね』
もしかしたら私の絵は、
君の形すら写せていないのではないだろうか。
だって、この絵を見ても君が浮かばない。
君が笑った顔すら思い出せないの。
私の手元に遺ったものは、刀と絵とお骨だけ。
全部が君の"形"だけにすぎないもの。
「うーん、中身もあるんじゃないか?」
「俺はAと過ごせて楽しかったよ」
「思い出はきっと、中身の詰まった俺達の形だ」
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Nami - 冨岡さんとの甘々な話お願いします。少々ピンクとか…/// (2022年11月28日 16時) (レス) id: 7f8b02d024 (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - お酒さん» コメありがとうございます!!音柱様ぜひ書かせて頂きたいです!(ただし全年齢作品&作者自身未成年の為、あまり色濃くできないのでご了承を…)テスト前なので気長〜にお待ちいただけるとありがたいです(>.<) (2021年6月17日 19時) (レス) id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
お酒 - 宇髄さんが見たいです(^^)少しエ○く…とかってできますかね? (2021年6月17日 18時) (レス) id: 48240712ac (このIDを非表示/違反報告)
楪日織(プロフ) - 吹雪さん» わっ……かりました。初書きになるので、遅いですし温かい目で見守ってください。 (2021年5月17日 20時) (レス) id: fd467e3021 (このIDを非表示/違反報告)
楪日織(プロフ) - むこぴさん» ありがとうございます! たぶん、絶対の時は三部作にする予定はなかったから伏線もほぼほぼないんですけど……笑 泣いていただけたなら嬉しいです。 (2021年5月17日 20時) (レス) id: fd467e3021 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さつむいこん x他1人 | 作成日時:2021年3月11日 18時