貴方の3分を下さい。【鬼滅の刃×短編集】

★2人の形【日】 ページ44

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死ネタ&時系列ブレブレ&ネタ迷走注意です。
参考:形 菊池寛


#竈門炭治郎
#切甘にしたかった #カタカナ乱用


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「…A、飽きないのか？」


『うん！今日もカッコいいよ炭治郎』


「そう言ってもらえるのは凄く嬉しいんだが…」




苦笑しつつ、炭治郎が木刀を振り下ろす。

縁側で座って見ることしか許されない私は、
足をブラつかせてスケッチブックを開いた。



大好きな人は、常に死と隣り合わせ。

せめて"形"だけでも手元に残しておきたいの。
その姿も表情も、形だけは保ったままで。


鉛筆を走らせて、稽古中の彼をスケッチする。

真夏の太陽が彼をジリジリ照りつけて
汗の雫がキラキラと輝くところまで、全部を。




「…っこら、出てきちゃ駄目だろ！？」


『やーだ、お水渡したかったんだもん』


「日に当たると良くないんだぞ！？」


『そんな、ちょっとくらい平気だよ』




私は鬼じゃないけど日に当たれない。
体が異常なほどに紫外線に弱いからだ。

…だからと言って、炭治郎は過保護すぎる。
数秒くらい日の下にいたって大丈夫なのに。



死にそうなのはどっちなの。

沢山の潰れた豆痕に、身体中に入った傷。
私より君の方がよっぽど死に近い生命体だ。




「ほら、早く中に入るんだ」


『…むぅ』


「時透くんに叱ってもらうか？」


『嫌です戻ります』




あの人も相当過保護だと思ってる。
些細なことで心配してきて逆に怖い。

それだけなら全然良いんだけど、
あの人私が外に出たら竹刀持って追うんだよ。

ニッコニコしながら。




「ほ〜ら、早く俺を描いてくれ」


『もういっぱい描いちゃったもん…』




着々と貯まっていく炭治郎の"形"。
私しか見てない彼の瞬間が切り取られていく。

だけど、それはあくまで形だけ。
やっぱり中身がないと、結局は空っぽだ。


私の絵も、所詮その形にしかならない。





『炭治郎』


「どうした？今夜は随分甘えたさんだなぁ」




色々あってお館様に引き取られた私は、
彼が入隊する前から鬼殺隊を知っていた。


初めて会ったのはあの会議。

私の体は既に病に蝕まれていたけれど、
彼の笑顔で体が澄み渡ってく感じがしたんだ。




『……いなくなっちゃ駄目だよ』


「うーん、軽々しい約束はできないな」


『…そこは嘘でもいなくならないって言ってよ』




そんなこと分かってるよ。

昨日楽しく話した人の訃報を聞くなんて、
この家にいればよくある事だから。

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