3.ラムネビーダマ ページ4
▽▲▽
「今日もやるの?毎日居残りしてるよね」
『半端な努力って1番無駄でしょ?
やるんなら最後までちゃんとしたいの』
努力の人、そんな言葉が似合うと思う。
もちろんそれに匹敵する才能も持つ人だ。
初めて喋ったあの日から早3日、
部活帰りに話しかけるのが日課になった。
だいぶクールな子かと思っていたけど、
慣れればそれなりに普通に喋ってくれる。
どうやら人に対して耐性がないようで、
ちょっとからかっただけで赤面することも。
ちょっとだけ、可愛いなと思う自分がいた。
「…そう言えば名前聞いてなかったよね」
『あっ、
「………火宮、って」
『入学式の答辞読んでたよ、私』
「だよね、だから僕も知ってたんだ」
顔を見たことあるって思ってたけど、
式でちょっと見ただけだったんだ。
僕にしてはよく覚えてたな、
そう思っていたら彼女が口を開いた。
『時透くんでしょ?』
「なんで知ってるの?」
『部活で噂されてた。かっこいいって』
おもむろにトランペットを吹く彼女は、
きっと恐ろしいほど無自覚なんだろう。
絶対1ミリも分かってない。
ソロを高らかに吹き上げる自分の横で、
何気ない言葉にニヤついてる僕がいること。
「……ねぇ、いつも何時に帰るの?」
夏の最終下校時刻は基本6時だけど、
この学校は土地柄から電車通学の生徒が多い。
通学圏もそれなりに広いから、
人によっては割と帰りも遅くなる。
今でさえ日は暮れかけてるのに、
ここからまだ吹き続けてたら大分遅いはず。
『7時かな、7時で音楽室閉まるから』
「え、もう真っ暗じゃない?」
『うん』
「いや、"うん"じゃないんだけど…。
あのね、君女の子だよ。夜道危ないよ」
『私が男ならもっと愛想ある子狙うもん。私は大丈夫』
「いやいや……」
どこかズレているというか、
いまいちそういう自覚がないというか。
普通に可愛い顔してるし男子人気も高い。
髪も長くて綺麗だし、体も華奢だし。
僕がそういうことをする男なら、
たぶん1番に目をつける対象だと思う。
『帰らないの?日が暮れちゃうよ』
「んー、僕も7時までここにいようかな」
純粋に心配なのが3割、
あと1時間一緒に話していたい欲が7割。
坂道の柵に寄りかかってみると、
思ったより心地いいもたれ具合だった。
『時透くんのお母さん、心配しない?』
「君の家のお母さんは心配しないの?」
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指切り(物理) - 素敵な作品ありがとうございます(*- -)(*_ _)ペコリ。いやぁホントに神すぎます! (2022年4月5日 10時) (レス) @page25 id: dfc5bee49e (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - ぱらさん» 全部の言葉が光栄でしかないです、めっちゃ幸せです…!!こちらこそありがとうございます🙇♀️ (2021年11月11日 17時) (レス) @page24 id: 423a130570 (このIDを非表示/違反報告)
ぱら - 楽しく読ませて頂きました!一個一個の言葉が胸に染みました…!素晴らしい作品をありがとうございます!! (2021年11月8日 17時) (レス) id: 1cfc9a3f72 (このIDを非表示/違反報告)
さつむいこん(プロフ) - ミユモンさん» わあぁありがとうございます光栄です…っ!!のんびり更新ですがどうぞお付き合いください🙇🏻♀️ (2021年10月28日 23時) (レス) @page11 id: dc07c220d6 (このIDを非表示/違反報告)
ミユモン(プロフ) - 言葉の使い回しがすごく好みです…更新頑張ってください🙌✨ (2021年10月28日 20時) (レス) id: 2ad0dd50d0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さつむいこん | 作成日時:2021年10月7日 23時