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目の前で返してとぼやく太宰を如何したら抑えられるのかを必死に考えるトントン。秘密機種での連絡でメンバーが集まるのも直ぐで在ろうが、今の状態の太宰は不安定過ぎるのだ。
「＿＿＿＿其れがないと私、罪を償えないのだよ。…返して、」
「…嫌や。」
太宰の左腕の包帯が取られているのは、切る為で在ったのだろう。見慣れている筈である血液がべっとりと付着したメスは、ぎらりと光を反射させる。
「っ、私に構わないでくれ給えよ。」
太宰は、其の茶褐色の瞳を細めて此方を睨んだ。どう考えても、其れは只の強がりで在った。自分に構うなと言う割に、太宰は寂しそうな表情をする。
「其れは、出来ひんな。＿＿そんな顔しとるお前を、独りには出来ひん。」
トントンは、太宰から奪ったメスをベッドから遠く離れた机に置き、其れからゆっくりと太宰に近づいた。
「＿＿＿＿ぇ、」
太宰の困惑している声が、トントンの耳元で聞こえる。其れは、トントンが太宰の身体を優しく抱き締めたからだ。
熱のせいか、此の間よりもずっと熱い其の身体を自分の腕に閉じ込め、其れから太宰の血で服が汚れるのも気に留めず、其の背中に手を回す。
「よく頑張ったな。＿＿偉いで。」
最初は抵抗を見せていた太宰で在ったが、其の言葉を聞いて、少しずつ手に込めた力を弱くする。
＿＿＿＿A、よくやったね。偉いよ。
＿＿＿＿流石はAだな。頑張った。
＿＿＿＿Aさん、お疲れ様です。よく頑張りましたね。
太宰の脳に、大切な彼等との記憶が浮かんだのだ。
「…私、＿＿えらいの、？」
「おん。めっちゃ偉い。」
ふわりとした髪を撫でてやり、ぽんぽんと背中を叩いてやる。太宰の声は、涙を含んでいた。
「＿＿＿＿こうするしかなかった、」
「…うん。」
太宰が、トントンの胸に顔をあてがい、其れからゆっくりと続ける。
「なにか在る度に、くりかえしたのだけど、」
自傷行為のことだ。頭をぐりぐりと胸に押し付けてくる太宰は、初めて我々の前で弱音を吐いた。
「＿＿＿＿しにたい、」
太宰の腕が、トントンの背に回る。肩は震えていた。ぼそぼそと呟いた其の言葉は、太宰の本心で在ろう。
「＿＿みんな、私を置いて行くから、」
「うん、」
トントンは、相槌をうちながら太宰の話に耳を傾ける。トントンの服に染みが出来て行く。
「＿＿私、独りなのだよ、っ、」
太宰は泣いていた。其れは、下手くそな涙で在った。
ラッキーカラー
あずきいろ
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めい - 好きです！もっと評価されるべき！次の更新待ってます！ (2020年4月5日 21時) (
レス) id: f3d3ee67c0 (このIDを非表示/違反報告)
シラゆ - コメント失礼します(小声)表現の仕方や夢主の設定、とても心に刺さりました。勉強不足を感じさせられるほどの語彙力、尊敬します！文スト？を知らない私でも物語にのめり込めました！更新頑張ってください！コメント失礼しました。 (2020年3月31日 9時) (レス) id: dc5a42bdb9 (このIDを非表示/違反報告)
すりーぷ(プロフ) - 好きです……その場その場の背景？が見えて…なんと言うか……とっても綺麗で文ストの雰囲気等も確りとあって……続き楽しみに待ってます…!応援してます、頑張って下さい！(語彙力が無くて…) (2020年3月30日 19時) (レス) id: 6c2b3e4a08 (このIDを非表示/違反報告)
うみ(プロフ) - 情景描写がとっても綺麗で、1話読んだら「あ、これ好きだな」って思いました！文ストの雰囲気を残しつつ独自の世界観もあって続きが楽しみです！！頑張ってください！応援してます！ (2020年3月28日 9時) (レス) id: c77cf16874 (このIDを非表示/違反報告)
暁月 - あ、好きです。 とっても読み易くて、なんというか…「わあ…！！」となるような感じの……はい。(これが語彙力がない人の見本です) 更新頑張ってください！応援してます。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: b7a49d6e6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙藤 | 作成日時：2020年3月27日 2時
