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「＿＿＿＿ごめ、なさ、」
布が擦れる音がした。此処は医務室。宵も深まり、蝋燭の灯りで手元を照らしながら読書を楽しんでいたしんぺい神と、其の隣で最近の異能力についてを載せた資料とにらめっこをしているグルッペン、其れから外交官で在るオスマンが帰ってくる曜日をカレンダーで眺める鬱の耳に、太宰のか細い声が聞こえた。
「＿大先生。」
「ん、」
太宰の眠っているベッドへと近付き、其の額に手を置く。じりと伝わってくる熱に、鬱は溜め息を溢してからグルッペンを見て首を横に振った。
「熱はひいてへんなぁ。少し高くなっとるみたいやし…。」
太宰の荒い息。先程の、狂ったような笑みを見せていた彼とは反面。親にすがる幼子のように謝罪を述べる太宰に、鬱はするりと熱を帯びた頬を撫でる。
「＿＿ぃか、な、いで、」
「…行かへんよ。」
眠っている時の方が、太宰の内側を知れる気さえしてくる。きゅっと鬱の服の裾を掴んだ太宰は、少しだけ目を開いた。
「＿＿＿＿おだ、さく？」
鬱を、大切な存在だと勘違いしているらしい。意識は未だに夢の中なのであろう。織田作之助の名を、先程コネシマとゾムから聞いた鬱は、残酷過ぎる運命を辿ってきた目の前の小さな子供の髪をふわりと撫でる。
「おだ、さく。わたし、がんばっ、たのだよ？」
再び目を閉じ、其れでも服の裾を掴んだ手を離さずに、太宰は続ける。
「＿＿だから、はやく、ぉしえて？わたしは、あのひとたちを…、しんじて、ぃい、の…？」
すぅと寝息が聞こえる。其処まで言った太宰は、再び夢の中へと意識を手放す。
「＿この子もこの子で、悩んでるんだろうね。」
しんぺい神が読んでいた本を閉じてから呟いた。其れからゆっくりと腰を上げ、座っていた椅子を離れる。
「腕の包帯、取るね？」
時効で在ると言わんばかりに、意味ありげに細められた其の瞳に、グルッペンもまた資料を机に置き、太宰の側へと近寄ってきた。
するり。グルッペンと鬱に見守られ、腕に巻かれた真っ白な包帯が音を立ててほどかれて行く。肌は病的な迄に白く、そして其処には予想していた現実が在った。
「
鬱が息を飲んだ。左手の内側には、雑に何度でも切り抉られた、生々しい傷が在った。
その他にも、腕には真新しい痣や古い傷、煙草の跡やキスマークが在る。
「＿先程の太宰の態度は、嫌われたくなかっただけなのかもしれないな。」
太宰が、涙を溢した。
ラッキーカラー
あずきいろ
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めい - 好きです！もっと評価されるべき！次の更新待ってます！ (2020年4月5日 21時) (
レス) id: f3d3ee67c0 (このIDを非表示/違反報告)
シラゆ - コメント失礼します(小声)表現の仕方や夢主の設定、とても心に刺さりました。勉強不足を感じさせられるほどの語彙力、尊敬します！文スト？を知らない私でも物語にのめり込めました！更新頑張ってください！コメント失礼しました。 (2020年3月31日 9時) (レス) id: dc5a42bdb9 (このIDを非表示/違反報告)
すりーぷ(プロフ) - 好きです……その場その場の背景？が見えて…なんと言うか……とっても綺麗で文ストの雰囲気等も確りとあって……続き楽しみに待ってます…!応援してます、頑張って下さい！(語彙力が無くて…) (2020年3月30日 19時) (レス) id: 6c2b3e4a08 (このIDを非表示/違反報告)
うみ(プロフ) - 情景描写がとっても綺麗で、1話読んだら「あ、これ好きだな」って思いました！文ストの雰囲気を残しつつ独自の世界観もあって続きが楽しみです！！頑張ってください！応援してます！ (2020年3月28日 9時) (レス) id: c77cf16874 (このIDを非表示/違反報告)
暁月 - あ、好きです。 とっても読み易くて、なんというか…「わあ…！！」となるような感じの……はい。(これが語彙力がない人の見本です) 更新頑張ってください！応援してます。 (2020年3月27日 22時) (レス) id: b7a49d6e6e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：沙藤 | 作成日時：2020年3月27日 2時
