真新しい制服 ページ1
桜が舞う4月、入学式。
憂鬱な気分にも仮面をかぶって
やり過ごそうと決めている。
小学校、中学校とずっと地元で育って
高校は、新しい自分を見つけたい!と
知り合いの誰もいない県外の高校を受験するつもりでいたのに。
意気込んでいた去年の10月。
両親の営んでいた喫茶店が閉店することになった。
無理を言ってでも志望校に行くには、
動機が不純だったし
地元は嫌だって誰にも言わなかった。
ある日の帰り道
紫耀「A、どこの高校行くの?」
「……北高。」
紫耀「まじ?一緒じゃん!」
私の2、3歩先を歩きながら紫耀が満面の笑みで振り返る。
紫耀がどこの高校に行くかこの時初めて知ったけど
「そうだね。」
素っ気なく答えた。
紫耀「よし!じゃあ俺の高校生活も安泰だ!」
「え?……ま…さか…だよね?」
何を隠そう家がお隣同士なことをいいことに
小学校高学年から今まで
担任の先生から直々に私が「紫耀を起こす係」
と任命されていた。
初めは冗談かと思ってたけど、
先生と紫耀のおばさんは本気だった。
この人ホントに朝起きない。
紫耀はお母さんと二人暮らしで
お母さんが早目に仕事に行っちゃうから
放っておくと夕方に起きてくる。
一度、私が寝坊して起こすの忘れた時は
放課後まで連絡取れなかった。
心配して様子を見にくと
おはよう、っておばさんの用意してくれた朝ごはん食べてた。
「もう!やっと解放されると思ってたのに!」
紫耀「はあ?!解放ってなに?だって!…お前は、その、俺の…」
「俺の?なによ。」
紫耀「俺の!…」
「あのね?"紫耀を起こす係"って言いたいんだろうけど、もう高校生になるんだよ?私たち。」
紫耀「…わかってるよ。…いや、そうじゃなくてさ……」
?
なんだかゴニョゴニョしている紫耀を不思議に思ってるうちに家に着いた。
「じゃね、紫耀。」
紫耀「…お、おう、じゃな。」
そんな日常。
−−−−−−−−−−
今日は、新しい制服、桜の下。
はぁ
大きなため息をついてみる。
なんとなくわかってる。
同じ日常がまた続くんだろうなってことは。
見上げた桜の木と空の
綺麗なコントラストがじんわりと目に染み込んだ気がした。
綺麗…
『きれいだね。』
驚いて振り返ると、
桜の花の妖精みたいな髪色のコが
後ろに手を組んで微笑んでた。
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作者名:Satori | 作成日時:2018年7月3日 8時