星が降ったら。 (ブラウン・ベス) ページ5
その日は夕食を早く済ませ、部屋に戻る予定だった。そんな中だ。ふと、窓の外に白い塊が横切ったのが見えて足を止める。
「マスター」
すぐに塊がなにか合点がいった俺は窓を開け、暗闇に佇む少女に声をかけた。
少女は上から聞こえた突然の声に少し驚いたように体が揺らしたが、振り返ると俺に幸せそうに笑いかけた。
「ベス君!」
暗闇と対比するような真っ白なワンピース。
垂らされた淡い金色の髪はぼうっと発光しているように見え、マスターが動く度風と踊った。
神秘的なその様に少し見惚れてしまう。
「…なにしてんだよ」
「ベス君も来てよ」
可愛らしく手招きする姿にため息をこぼすが、自分は自然に従ってしまうんだろう。
夏といっても夜は冷える。
自分の部屋から薄手のブランケットを手に取りマスターの元に向かった。
「で?一体何してたんだこんな夜に」
「心配してるの?」
「あのな…!」
「座って?」
説教でもしようと話し出すが、悪びれた素振りも見せずに聞くマスターにいつもの騎士道やら小言が飛びだしそうになる。
そんな俺の唇にマスターは人差し指を当てた。
フニフニと感触を楽しむように触る動作とねだるような眼差しに何も言えなくなってしまう。
「ベス君なら来てくれると思ってたの」
俺の様子にクスリっと微笑むマスターはどこか確信めいた口調で呟くと、ゆっくりとその場に座る。俺も習うように隣に腰掛けた。
「ベス君遠いよ」
「普通だろ」
「寒いから近くにきてよ!」
「寒いならほら、ブランケット
持ってきておいたぞ」
唖然とするマスターの肩にブランケットをかける。渡されたブランケットを握りしめマスターは頬を膨らませた。
…俺はマスターの気持ちになんとなく気がついてる。だからと言って俺は素直になれるわけではないんだ。
「鈍感」
ポツリと呟くマスターにどっちなんだかと呆れる。確信があるが、マスターは気づいていないのだ…俺の気持ちに。
無視を決め込むとマスターは意地になったのか俺との距離をつめる。ぴったりとくっついた布越しの肌を遠ざけようと手を伸ばすが、すかさずマスターが自分と俺の体をブランケットで包み込んだ。
「逃げないで、命令」
「お前なぁ…」
どうなっても知らないぞ、と他人事のように考えガシガシと頭をかく。
至近距離にある真剣な顔に反応しないほど俺は大人でもない。しかも、マスターは俺が騎士であることなんて望まないなら、尚更。
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作者名:豆腐 | 作成日時:2019年4月5日 22時