四十一日目 ページ41
森の中にいたAは足元にいるあやめを抱き上げた。
あやめはそれを嫌だと言いたげにすり抜けてしまう。
『あやめ、あの子と知り合いでしょ？』
Aの脳内に過る女子生徒、向日葵。
あやめは聞いてないふりをするように尻尾を揺らした。
『あやめ。』
強くAがそう言うと、あやめは諦めたようにAを見上げた。
『...やっぱり、あの子人間不信だったんだね』
あやめと話していたAは頷いた。
あやめ曰く、向日葵はあやめにだけ心を許し話してくれていたらしい。
向日葵は幼い頃から優等生として居たらが、過度なプレッシャーがキツかったらしい。
人間不信になってしまったのはそのプレッシャーからだとか。
『...ふぅ、ま、あの子は成仏したみたいだよ』
しゃがみあやめの頭を撫でるとあやめは気持ち良さそうにしながら一鳴きした。
『...ぁ、朝だ』
ぼそ、と呟いたA。
身体中から力が抜けていく。
眠そうに目を閉じていくA。
脳内はじんわりと霧がかかっていくように輪郭をなくす。
はっきりとした意識もないまま体が炭酸の泡のように消えていく。
日の光が辺りを照らすとき、Aの後はなくあやめがただ一匹でその場にいるだけだった。
あやめは眠そうに欠伸をしその場から離れる。
あやめはその瞳でキョロキョロと辺りを見渡しながら学校付近へと向かっていった。
「...あれ、猫じゃん」
あやめが見上げると赤い瞳と目があった。
レウクラウドだ。
レウクラウドは少し不安そうにしながらあやめへと手を差し出した。
「噛まないかな...」
あやめはレウクラウドの手とその瞳を交互に眺める。
少ししてからあやめは「いいよ、」と言うように鳴いた。
レウクラウドは驚いた表情をしたあと、決意したようにあやめの頭を撫でる。
「...噛まない。
いい子だね」
レウクラウドは微笑み、あやめは気持ち良さそうに目を細めた。
少ししてから、眠そうに目を擦りレウクラウドは時計を見た。
「あ、仕事に遅れちゃう」
意外にも何時間か経っていたようだ。
レウクラウドは慌てたように立ち上がりその場を離れていった。
あやめは暇になったからか、体を起こし裏庭へと向かった。
綺麗な花たちに多種多様な動物たち。
あやめはその中に紛れ込むように歩んだ。
沢山の動物はあやめを目に入れるも無視をしてしまう。
ある意味、あやめはひとりぼっちなのかもしれない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
