五日目 ページ5
「まぁ、三年生の担当ですし仕方ないとは思いますけどね」
「エミさん...コンタミさん結構有名なのに知らんのは可笑しいと思うで？」
エーミールの言葉に苦笑いして返す男。
薄い灰色の混じった水色の髪が光に反射し鈍く虹色に光る。
「有名なんですか？」
驚き目を見開くエーミールに「逆に知らないの？」と驚いている男。
「え、しんぺいさん、俺知らんのやけど...」
そう言い困ったようにエーミールがしんぺい神を見るとしんぺい神は「ほんまかぁ」と声を漏らした。
「ほら、イラスト凄いやん？」
「ああ、表現主義溢れるやつですか？」
「ん？」
エーミールの言葉に鬱が反応し顔をあげる。
反応速度の速さに腹を抱え大笑いするコネシマ。
「イキリ警察や」
ノリノリで笑うゾム。
エーミールは焦り、鬱は距離を詰めていた。
ぐいぐいと進んでいく鬱に「邪魔」と肩を押すひとらんらん。
鬱は口を尖らせ「しんらちゅ...」と漏らす。
ひとらんらんだけではなく、シャオロンやトントンまで「きっしょ」と睨み付けていた。
鬱は仕方ないといった様子で座り直す。
「てか、今日のきょーさんたち見た？」
「ああ、ばどきょー先生？」
「いや、らっだぁさんときょーさん」
二人で話し出すチーノとショッピ。
ショッピは「見たけど」と適当に返す。
「なんか、喧嘩しとったよ、廊下で」
「へぇ...知らんかったわ」
栄養食を食べる二人を見ていたシャオロンは、「え、何々〜？」と混じってきた。
ゾムやロボロ、トントンも気になるようで耳を傾ける。
それに対して特に先生に興味のない三年生のグルッペン、オスマン、ひとらんらん、兄さん、しんぺい神、エーミールは聞いているだけ。
話の流れが速すぎて最早ノリでしか話していない。
また、そんな状態のためAのことなど特に気にしていなかった。
「...あ、そろそろ時間やで」
時計へと目を向けた兄さんがそう溢した。
皆は各々食事をまとめ出ていった。
勿論、鬱も例外になく出ていこうとした。
...しかし。
「...ん？」
なにか違和感を感じて振り向く。
先程と変わらず青空が広がっているだけ。
鬱は何者のかも分からぬ違和感を気のせいだと自分に言い聞かせ屋上を出ていった。
誰もいなくなった屋上。
彼らがいたところとは逆側、ドアの反対側には一匹の猫がいた。
猫は眠そうに欠伸をすると尾を振り、銀に光る手すりを抜け屋上から背の高い木へと渡り歩いた。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
