二十七日目 ページ27
「Aちゃぁん...」
半泣きの鬱に呆れながらも『どうしたの？』とAは鬱に寄っていった。
「もうやだぁ」
『はいはい、嘆いてないで、どうしたの？』
優しい声に鬱は話し出した。
「同級生に馬鹿にされた...机違う部屋に置かれたし...」
『...そっかぁ』
鬱はぐずぐずと踞る。
『嫌だね、本当に』
「あ〜あ、頭良かったらなぁ」
鬱の言葉に目を丸くさせるA。
『鬱、頭良さそうだけどね』
「は？嫌々嫌々、ないで？」
『いや、なんだろ...
馬鹿なんだけどさ、地頭は良いじゃん？多分だけど』
次は鬱が目を丸くさせる番。
「いや、僕は...」
『頭良いでしょ。周り良く見えてるし、人の違いもいち早く気がつくタイプじゃない？
勉強面できなくても、生きる技術はあるタイプ。社会で大切なタイプじゃんか』
鬱は少しずつ「僕はそんなやつじゃ、」と否定する声が小さくなっていく。
『鬱。自分を信じてあげようよ』
そう言うと鬱は複雑そうな顔をする。
しかし、その表情を浮かべるだろうと予測していたAは鬱の頭を撫でた。
『大丈夫、少しずつ、少しずつ...ね？』
鬱は幼い子供のように黙って頷いた。
Aは何故普段キツくしている自分にここまでなつくのか驚きながらも鬱を見た。
「...なんや？」
不思議そうに夜空の瞳と目が合う。
『...いや、綺麗なアイ色だなって思って。』
鬱は理解できなかったのか首をかしげたが、直ぐに納得したように口を開いた。
「Aちゃんやって綺麗なアイ色しとんで」
想定外な鬱の言葉にAは驚きを隠せない。
『鬱は、綺麗だよ』
自分はそうではないと遠回しに言いながら鬱の頬に手を添える。
「...Aちゃん、俺やって男なんやで」
目線をあげる鬱。
その瞬間目があった。
『...ふは、私にしてみればあなたは何歳も年下。男だろうが子供なのよ』
くすくすと笑うAに鬱は諦める。
「口説いたろ思うたんに」
『残念ながら、生前嫌と言うほど告白されたものよ』
「うっそ！」
失礼だな、とAは鬱を睨み付ける。
鬱は、へらへらと笑みを浮かべた。
『自分で言うのもなんだけど文武両道だったからね。』
「...そうなんやな。綺麗なのに頭良くて運動できるとか最強やん」
『...そうかな』
Aが少しでも目を瞑れば思い出す記憶。
あまりよい記憶はないが。
『楽しかったのかもね』
ぼそ、と小さく呟かれた言葉は鬱に届くことなく消えていった。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
