二十六日目 ページ26
「まぁ...なんだろう、そこまで話せないけどな。
妹と一緒に、コイツを育ててたんだよ」
足の上に乗るあやめを撫でるらっだぁに鬱は黙って目を向ける。
あやめを慈愛に満ちた目で眺めるらっだぁに何も言えなくなる一同。
「...はは、なんでお前らがそんな顔すんだよ」
皆が互いに見合うと複雑な表情をしていた。
「凄いな、知らないやつにそこまで感情移入できるなんて」
「いや...まぁ、そうですね」
何か反論しようとしたがやめた鬱に疑問を感じながらもスルーするらっだぁ。
「らっだぁ先生は、幽霊とかの類いを信じますか？」
そう言うオスマンに「ちょ、」と止めようとしたチーノだったが表情から何かを考えた上での行動だと気がつき止めるのをやめた。
「俺は...俺は、信じないよ。幽霊も、鬼も、神も。
だって、いたとしたらなんで態々こんな世界を作ったのか、って思わない？」
眉を下げて笑うらっだぁにオスマンは一瞬引け目を感じる。
しかし、オスマンは決心して話を続けた。
「信じないんですね」
「うん、じゃあオスマンは？」
「俺、ですか？」
「うん。」
オスマンは困ったように、それでも真剣に答えようと顎に手を添え悩む素振りを見せる。
「俺は信じてますけどね。」
「へぇー...見えるの？」
「ふふ、どうでしょう？
あ、そろそろ時間じゃないですか？」
匂わせながらも話を上手く反らすオスマン。
らっだぁは腕時計へと目を向け、「本当だ」と小さく呟き屋上から出ていった。
「...マンちゃん」
不安そうにする鬱にオスマンは安心させるように笑う。
「大丈夫やで、大先生」
「...ほーか」
鬱は不安そうな顔を無理矢理笑顔へと変える。
それには皆も気がついたが、黙った。
「大先生、行こうや」
シャオロンはそう言い立ち上がった。
「せやな」
そう頷き大先生はシャオロンについて屋上を出た。
「んじゃ、俺らもいきますかね」
「せやな。移動教室やし」
三年生組は直ぐに屋上を出て、一年組は何も言わず戻っていく。
二年組もそれぞれ屋上を出ていった。
残ったのはあやめだけ。
あやめは宙を見つめ一鳴きした。
何もない空間から歪みを作り現れるA。
『...あはは
体が保てなくなりそうだよ』
Aはそう言った。
そんなAの体は綺麗な晴天を背後にするには異様だ。
その時のAの表情を知っているのは、あやめだけだ。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
