十六日目 ページ16
お昼、飼育小屋前のベンチで足を揺らしながらあやめとAが日向ぼっこしているとゾムがやって来た。
「行くで」
Aは膝の上にいたあやめを下ろし、立ち上がった。
『...違和感ないよね？』
「あ？平気やろ。人数少なくてもそう言う服装の奴居るし」
ゾムは気にしない雰囲気で進んでいってしまう。
慌てて後を追うように歩くA。
中々校舎に入る機会のなかったAは、何もかもが新鮮で前へと進みながら楽しそうにする。
ゾムはそんなAを見て、少しだけ歩む速度を緩めた。
どんどん階段を上っていく。
それにつれ、Aの歩みは重たくなっていった。
ゾムはそんなAに気がつき、「疲れたん？」と声をかけるが、Aは困ったように笑うだけだった。
「...ああ、そうやったな」
ゾムは何かに気がつき、頷くも「頑張ってほしいんやけど」と申し訳なさそうにした。
『大丈夫、頑張れる』
ゾムの反応の意味も知らずにAは頷き上を見あげた。
少しずつ上っていく。
...と言っても、本校舎より低いため直ぐに屋上についた。
『緊張もヤバいわ』
目線をそらすA。
鬱といるときは辛辣なのに、他では結構表情豊かな感じがする。
「ほら、行くで」
パッパと屋上へと一人で出ていってしまうゾムを『鬼畜だ』とぼやくA。
「んぁ？おい、誰か呼んでくるんとちゃうんけ」
「え、ちょ、ゾム？」
外から色んな人の声が聞こえてきて、Aは顔を青くさせる。
「なんや、俺は連れてきたぞ」
ゾムがドアへと目を向けた為にAへと目線が集まる。
『え〜っと...どうも？』
冷や汗を垂らしながらAは目線を泳がせた。
「ふむ。名前を聞こうか」
一番威圧の強いグルッペンがそう言うと、Aは怯えたように肩を揺らした。
金髪であることが怖いようだ。
『...Aです』
「あ、君が！？」
シャオロンが飛び上がりAの側へと寄る。
「どーも、シャオロンです！鬱には聞いとったんですよ！」
Aの手をとり爽やかな笑みを浮かべるシャオロンにAは困惑したように眉を下げた。
「Aさん、俺のこと覚えてる？」
唯一知っていたのか、ひとらんらんが挙手した。
『...嗚呼、飼育委員さん』
Aは身に覚えがあるようで頷く。
「名前知らなかったから、反応できなかった」
ひとらんらんが申し訳なさそうに皆に向けてそう言う。
一方Aは意味もわからず首をかしげるばかりだった。
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作者名：咲々姫 | 作成日時：2021年2月2日 16時
