主婦喪失 6 ページ31
翔サイド
声を掛けて来たのは、ここのセンター長で大学の先輩でもある、井ノ原先生。
先生はいつもの笑顔を全く見せず、話始めた。
「時間がないから、諸々は省く。
察しの通り子宮外妊娠。恐らく卵管破裂を起こしてる。時間との勝負になる。必要と思われる処置の全てを任せてもらえるか？」
本来なら別室でインフォームドコンセントをするような場面。
だけどそれさえ省かないといけないような切迫した状況なんだろう。
もちろん、俺たちに専門知識があるからということもあるんだろうけど。
「はい、俺は…」
隣にいる雅紀に視線を移すと、いきなり2つ折りになるぐらいの勢いで、ガバッと頭を下げ、
「お願いしますっ！何とか助けてやって下さい！」
絞り出すような低い声で。だけど力強くそう言った。
「全力を尽くす。
任せてくれてありがとう…」
そう言うや否や、あっという間にスタッフの輪に入り、指揮を取り始めた。
ちょっとの間、立ち話をしていただけにも関わらず、既に中心静脈カテーテル(CV)を入れられ、挿管を終え呼吸器に繋がれているゆか。
「もう待てないな…
ここで開くよー！
消毒、急げ！1分1秒の争いだぞ！」
井ノ原先生の驚くような決断に声も出ない。
ここで開腹手術？って思ったけど、スタッフはさも当然といった様子でテキパキ動いている。
むしろ先ほどまでより、更に機敏に動いているようにも見えた。
それは最高指揮官の加入で、スタッフひとりひとりに全く迷いがなくなったからなのか…
すぐにゆかの白くて薄い腹部にボトルから直接イソジンが掛けられる。
乱暴に見える処置も今は仕方ないのか…
滅菌ドレープが掛けられ、それこそあっという間にオペが始まった。
「サクションしっかり頼むよー」
腹膜に到達したのか、前立ちの医師が井ノ原先生の指示に従って吸引器を手に、動きを小さくした。
井ノ原先生もそれまでと違い、ゆっくりとした動きに変わった。ここからでは術野は見えないけど、出血点を探しているのか…
そこへ、
「ギネの大倉ですー」
産婦人科医がやってきた。
すぐにグローブをつけ、スタッフの輪の中心へと進むと、
「あっちゃー結構酷いなー。こりゃあ温存はできんなぁ」
と。
まだ30才になったばかりのゆかの卵管が温存できないなんて…
俺はその事実に言葉を失った。
それでも…
それでも、ゆかの命には代えられない…
隣にいる雅紀も一言も言葉を発することはなく、固く拳を握り締め、立ち尽くしていた。
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虹(プロフ) - ebi信号さん» こんばんはー！コメントありがとうございます(^O^)ワクワクしてもらえて、私も嬉しいです♪これからもよろしくお願いします(^o^ゞ (2019年4月12日 22時) (
レス) id: d02e7023d3 (このIDを非表示/違反報告)
ebi信号(プロフ) - profile読んだだけで、泣きそうになってしまった。ワクワクとホッと安心感です。この世界を続けてくれて、残してくれてありがとう…。 (2019年4月12日 0時) (レス) id: 7ab42f2331 (このIDを非表示/違反報告)
琴子(プロフ) - 虹さん» ありがとうございます！こちらこそ(^-^)/ (2019年1月2日 16時) (レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
虹(プロフ) - 琴子さん» 良かったぁ(^O^)これからもよろしくお願いします(^o^ゞ (2019年1月2日 13時) (レス) id: d02e7023d3 (このIDを非表示/違反報告)
琴子(プロフ) - 虹さん» さっそくにありがとうございました！見れました＼(^o^)／ (2019年1月2日 13時) (レス) id: cc1132a1bd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：虹
| 作成日時：2018年12月24日 18時
