愛着 3 ページ41
雅紀がいつの間にか、俺の腕の中で寝息を立て始めたので、更に突っ込んだ質問をして、雅紀の状態を理解しようと試みた。
坂本先生はそんな俺に嫌な顔ひとつせず、真摯に向き合ってくれ、丁寧に指導してくれた。
そして俺からの質問が出尽くしたころ、今までより更にゆっくりとした、優しい口調で、
「なーんにも心配いりませんよ、園長。
今まで通りで良いんです、特別なことをしなくても。
ただただこの子を愛しいって気持ちを持ち続けているだけで。
行動は必ず伴いますから、ね？」
って。
確かに今日は特に目新しいことを言われた訳ではなかった。
『全てを受け止めてあげて』
先生の言葉の端々から感じられたのは、それだけだった。
雅紀を抱いたまま、深々とお辞儀をしてタクシーに乗り込んだ俺に、
「いつでも連絡して下さい。私もできる限りの協力はさせてもらいますから…」
今日一番の笑顔でそう言って、見送ってくれた。
帰りのタクシーの中で、あどけない顔をして眠る雅紀の頭を撫でながら、
『もう悩むのも、迷うのも止めよう』
そう強く思った。
そんな暇があるなら、もっともっと正面からこの子と向き合おう。
それが5年先、10年先の雅紀のためになると信じて。
それからというもの、文字通り寝食を共にした。
生まれたての赤ん坊にするように、何から何まで全ての世話をしてやって。
随分経ってから専門家の意見を聞く機会があって、その人によるとその期間は俺と雅紀の蜜月で、愛着形成期だったらしい。
あわただしく過ぎ去った、雅紀が小学校に上がるまでの2年間は、俺自身も無我夢中で細かな記憶はあまりない位。
だけど雅紀が初めて声を上げて笑った日のことは、今でも鮮明に覚えている。
その頃の雅紀は、2,3才に相当する頃で、何をするにも「イヤ、イヤ」って言っては俺を困らせてた。
誰でも通る成長過程なんだけどさ。
雅紀の場合、それが半端なく凄かったから。
日々繰り返される『イヤ』に、完全に参ってた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 214人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
虹(プロフ) - 葵さん» 葵さん♪こんにちは。それぞれの過去2はまだ読めません。公開できるようになったらパスワードを外しますのでもうしばらくお待ち下さい。名前変換が上手くいくかの検証のため今回は下書きにせずパスワードを付けています。すみません！ (2018年12月16日 17時) (
レス) id: d02e7023d3 (このIDを非表示/違反報告)
葵(プロフ) - それぞれの過去Part2を、読みたいのですがどうすれば読めますか？ (2018年12月16日 17時) (レス) id: 7f01e38703 (このIDを非表示/違反報告)
虹(プロフ) - Nachikoさん» Nachikoさん♪こんにちは！コメントありがとうございます(^O^)続きは公開の準備が整いましたら公開しますのでもうしばらくお待ちくださいね？これからもどうぞよろしくお願いします(^o^ゞ (2018年12月16日 13時) (レス) id: d02e7023d3 (このIDを非表示/違反報告)
Nachiko(プロフ) - こんにちは！ 以前から読ませて頂いてます！毎回拝見するのが楽しみです♪続きが楽しみです！ (2018年12月16日 12時) (レス) id: fbc69c7e7a (このIDを非表示/違反報告)
虹(プロフ) - 桜＊潤さん» 桜＊潤さん♪今日も朝からコメントありがとう！多くを語らず手を掛けすぎず見守り続けた園長と大人への怒りを一旦置いて未来へと踏み出した翔ちゃん。智にぃの背中を追っかけて走りだしました。そんな姿が届いていれば嬉しいです。次partではいよいよゆかちゃんです！ (2018年12月16日 9時) (レス) id: d02e7023d3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：虹
| 作成日時：2018年12月12日 9時
