【ars】ステップファミリー 15 (ページ38)

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年の瀬の悲劇 30 ページ38

ゆかサイド

退院して2日間はまだ保育園があって、日中はひとりで静かに過ごして、少しでも回復するようにと努めた。

そのかいあってか、もう痛み止めを使わなくても過ごせるまでになった。

にぃたちも交代で保育園の送り迎えをしてくれたり、食事の準備を手伝ってくれて。

だけど、29日の明日だけは何もかもひとりでこなさなくちゃいけなくて、夕方から凄く不安になってしまったの。

そんな私にすぐ気付いて声を掛けてくれたのは、智にぃ。

「なーに難しい顔してんの？」

ふにゃっとしたいつもの笑顔を浮かべて訊かれれば、それだけで心が軽くなるのは何でだろ？

「明日、大丈夫かなってちょっと心配になっただけ…」

まーちゃんには中々素直になれなくても、智にぃにはスルッて本音が喋れて。
そしたら智にぃは、

「あ、そのことね？
僕さ、明日は昼過ぎに出勤で良くなったから。年休取れれば良かったけど外来は休診にできないから、ごめんよ？」

そんな風に謝られて、何だか悲しくなった。

自分の不注意で招いた、この家始まって以来の最大のピンチ。なのに忙しい最中、仕事を調整してくれたと思ったら申し訳ないやら、自分が不甲斐ないやら。

何とも言えない気持ちになった。

「家族のピンチは家族みんなで協力して乗り越えるんだよ？」

って、また私の心を見透かしたような言葉をくれた。

そしたら、何かもうゴチャゴチャ考えてるのがバカみたいって思えたの。

だって私が考えたり、不安に思ったりすることの全部をきっとにぃたちは分かってる。
で、それを回避したり乗り越えるための策を考えてくれている。

だったら私が色々考えて暗い顔してるなんて、ただのムダでしかないなって。

そう思えたら、素直に

「智にぃありがとう。何か安心した」

って言えた。

「いいえ。
もっと早く言ってあげれれば良かったんだけど、調整に手間取ってて今日決まったからさ？」

「うん…」

もう言葉はいらない。智にぃが醸し出す不思議な空気に包まれてフワッと温かな気持ちになった。

そこにお風呂に入っていた和と潤、まーちゃんがバスタオルを巻いてリビングに入ってきた。

「えっ？呼んでくれれば良いのに…」

いつもは脱衣所から呼んでくれるから、誰かが子どもたちを受け取りに行くのに。

「いいのいいの。できることは自分たちでやるんだもんな？」

って和と潤を見ながらまーちゃんが言う。

「「うん！」」

それに飛びきりの笑顔で和と潤が答えた。